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 昭和56年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/2 

2 教育活動等

(1) 教育活動
 受刑者に対する教育活動としては,入所時教育,教科教育,通信教育,生活指導,出所時教育などがあり,教育・指導に当たっては,職員はもちろん,民間の篤志家も参加しており,また,視聴覚機器等の教育器材も広く活用されている。
 入所時教育は,新たに入所した受刑者に対し,矯正及び保護の目的と機構,生活心得や遵守事項等の所内規則,処遇の概要,保護関係の調整,釈放後の生活設計等の教示及び指導を行うことに重点が置かれ,入所時の精神状態を安定させるとともに,矯正処遇の目的と実際を理解させ,有意義な受刑生活を送り,社会生活に復帰するための心構えを持たせるよう努めることとしている。
 教科教育は,それを必要とする受刑者に対して実施されている。教科内容について見ると,義務教育未修了者又は修了者中の学力の低い者に対しては,国語,数学,社会その他の必要な科目の履修又は補習を行っている(少年受刑者については,第4編第2章第4節参照)。更に,向学心のある者に対しては高等学校通信制課程を受講させている。昭和55年中の教科教育履修人員は3,761人であり,その学歴別内訳は,義務教育修了者2,305人,同未修了者568人,高等学校在学中の者30人,同中退者527人,同卒業者331人となっている。
 通信教育は,主として学校通信教育と社会通信教育により,受刑者の教科教育及び教養向上の一環として行われている。受講者には,受講に要する費用の全額を国が負担する公費生と,受講者自らが負担する私費生とがある。昭和55年度中の受講者は4,009人となっている。
 生活指導は,受刑者の自覚に訴え,規則正しい生活及び勤労の精神を養い,共同生活を営む態度,習慣,知識等をかん養することを目的として行われるもので,受刑者の日常生活を通じて,しつけ教育,規律訓練,講話,読書指導,クラブ活動,集会,委員会活動(受刑者の中から給食,衛生,図書,放送,文化等の各委員を選び,当該活動が円滑かつ効率的に行われるようにするための一種の役割活動)などを行うとともに,個別又は集団カウンセリングが実施されている。また,受刑者に社会生活上必要な知識と経験を得させるために,施設外の工場等の見学,社会奉仕活動などの施設外教育活動も活発に行われており,昭和55年中の施設外教育活動の実施回数は2,238回で54年に比べて264回の増加となっている。
 出所時教育は,矯正教育の総仕上げとしての意味をもち,社会情勢,出所に関する諸手続,更生保護,職業安定,社会福祉等の制度や利用手続などの解説及び教示,釈放後の生活設計に関する助言・指導,出所に当たっての心身の調整など,出所後,社会生活への円滑な移行に役立たせるためのプログラムが準備されている。また,できる限り社会生活に近い環境の中で,開放的なふんい気で行われるよう配慮されている。
(2) 篤志面接委員制度
 篤志面接委員制度は,個々の受刑者が抱いている精神的悩みや,家庭,職業,将来の生活設計などの問題について,民間の学識経験者,宗教家,更生保護関係者等の助言指導を求めて,その解決を図ろうとするもので,昭和28年発足以来,逐年活発化し,受刑者の処遇に定着したものとなっている。55年末現在の篤志面接委員数は,III-46表のとおり,合計1,123人で,55年における面接回数は,III-47表のとおり,合計11,580回である。その内訳は,集団に対するもの7,911回,個人に対するもの3,669回で,委員1人当たりの面接回数は10.3回となっており,面接の内容も多岐にわたっている。

III-46表 篤志面接委員数(昭和55年12月31日現在)

III-47表 篤志面接相談内容別実施状況 (昭和55年)

(3) 宗教教誨
 宗教教誨は,信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者の宗教的要求を満たし,宗教的自由を保障するために,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)により実施されている。宗教教誨は,受刑者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を養うとともに,心情の安定を図り進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。無期その他長期刑の受刑者に対しては,特に優れた成果を上げている。昭和55年末現在における教誨師の数は,1,334人で,各宗各派にわたっている。55年中における宗教教誨の実施状況は,III-48表のとおりであり,教誨師1人当たりの教誨回数は12.3回となっている。

III-48表 宗教教誨実施状況(昭和55年)