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 昭和56年版 犯罪白書 第3編/第2章/第2節/2 

2 ひん回入所受刑者の特質

(1) 入所度数・年齢層
 昭和55年における新受刑者2万8,374人を入所度数別に見ると,III-38表のとおり,1度目の者は1万1,799人で,新受刑者総数の41.6%を占め,次いで2度以上4度以下は38.3%,5度以上9度以下は15.9%,10度以上は4.2%(1,187人)となっている。

III-38表 新受刑者の入所度数別年齢層別構成比(昭和55年)

 次に,新受刑者について入所度数別に年齢層を見ると,1度目の者では,20歳代が40.7%を占めるが,10度以上14度以下の者では,40歳代が46.8%,15度以上19度以下の者では,50歳代が46.6%となり,20度以上の者では,60歳以上の者が32.2%を占めている。特に,70歳以上の者は,9度以下の者の中には0.1%ないしO.2%にすぎないのに対して,ひん回入所受刑者にはこの年代の者が多く,20度以上では5.1%を占めている。
(2) 罪  名
 III-39表は,新受刑者を入所度数別に罪名を見たものである。これによると,入所度数の多少,罪名によってその出現ひん度に相違のあることが分かる。すなわち,初人受刑者中に占める殺人の比率は3。9%であるが,入所度数の増加するに従って,この比率は急速に低下し,5度以上14度以下の者の中に占める殺人の比率は,1%未満であり,15度以上の者の中には皆無である。殺人以外の犯罪で,これと同様の傾向を示すものとしては,業務上過失致死傷と道路交通法違反が挙げられる。また,傷害,恐喝,賭博又は覚せい剤取締法違反の罪名を持つ者の比率は,入所度数2度以上4度以下の者の中に最も多いが,更に,入所度数が増加するに従って,これらの罪名を持つ者の比率はおおむね減少している。
 これらの犯罪と対照的な傾向を示すものとして詐欺が挙げられる。一般に詐欺の手口を見ると,その大部分が無銭飲食であり,殊に,ひん回入所受刑者にこの手口の者が多いと言われているが,初人受刑者又は2度以上4度以下の再入受刑者中に占める詐欺の比率は,それぞれ5.4%にすぎないのに対して,ひん回入所受刑者では,10度以上14度以下の者に17.5%,15度以上19度以下に34.6%,20度以上に57.6%と急激にその比率が上昇している。また,窃盗の比率は,入所度数2度から14度までは入所度数の増加とともに上昇し,10度以上14度以下の者では53.9%を占めているが,15度以上になると,その比率は大幅に減少している。
(3) 再犯期間
 III-40表は,昭和55年における新受刑者中,前刑出所前の犯罪による再入者を除いた再入受刑者1万6,320人について,本犯までの再犯期間を入所度数別に見たものである。再犯期間3月未満の者は,2度以上4度以下の者の中では9.6%であるが,入所度数が増加するに従ってこの期間に再犯する者が増加し,10度以上14度以下では28.0%,15度以上19度以下では46.2%,20度以上では64.4%となっている。これとは対照的に,再犯期間1年以上の者の比率は,入所度数が増加するに従って減少し,再犯期間5年以上の者は,20度以上の者の中には見られない。

III-39表 新受刑者の入所度数別・罪名別構成比(昭和55年)

III-40表 再入受刑者の入所度数別・再犯期間別構成比(昭和55年)

(4) 職  種
 入所度数別に犯行時の職種を見ると,III-41表のとおり,新受刑者の44.7%が無職であるが,入所度数が増加するに従って無職の者の比率が上昇している。すなわち,初人受刑者では,無職者の比率は37.9%であるが,10度以上14度以下では62.4%,15度以上19度以下では66.3%,20度以上では72.9%という高率を示している。また,入所度数20度以上の者で,犯行時,職業を持っていた者の職種を見ると,販売人,技能工・単純作業,サービス業従事者の三つの職種に限られているのが注目される。

III-41表 新受刑者の入所度数別・職種別構成比(昭和55年)

(5) 配偶関係
 新受刑者の配偶関係を入所度数別に見たのが,III-42表である。これによると,入所度数の増加とともに,未婚者と離別者の比率はおおむね増加し,配偶者のいる者の比率は減少していることが分かる。すなわち,未婚者は,初人受刑者では39.5%であるが,10度以上14度以下では47.4%となり,20度以上では50.8%の者に結婚歴がない。また,離別者は,初人受刑者では12.7%であるのに,10度以上14度以下となると31.4%,20度以上では35.6%となっている。これに対して,配偶者のある者は,初人受刑者では46.1%であるが,10度以上14度以下では18.3%となり,20度以上になると,わずか5.1%にすぎず,ひん回入所受刑者には,親しく相談のできる相手が少ないことを示している。

III-42表 新受刑者の入所度数別・配偶関係別構成比(昭和55年)

(6) 出所事由
 III-43表は,昭和55年の出所受刑者2万9,342人について,入所度数別に出所事由を見たものである。これによると,入所度数が増加するに従って,仮釈放を許可される者の比率が減少し,ひん回入所受刑者1,273人中,仮釈放者は,17.6%に当たる224人にすぎず,82.4%は満期釈放となっている。

III-43表 出所受刑者の入所度数別・出所事由別構成比(昭和55年)

(7) 出所後の帰住先
 上記出所受刑者について,帰住先を見ると,III-44表のとおりである。「父母のもと」が総数の27.0%で最も多く,次いで,「配偶者のもと」の25.8%,「更生保護会・社会福祉施設」の19.1%,「兄弟姉妹のもと」の10.0%の順となっている。これを入所度数別に帰住先を見ると,入所度数が増加するに従って,「父母」「配偶者」「兄弟姉妹」のもとへ帰住する者の比率はおおむね低下し,代わって,「更生保護会・社会福祉施設」を帰住先とする者が増加している。特に,更生保護会・社会福祉施設を帰住先とする者は,初人者では11.2%にすぎないが,15度以上19度以下の者では42.3%,20度以上の者では45.8%もおり,ひん回入所受刑者には出所後,身寄りのない者が多いことが分かる。

III-44表 出所受刑者入所度数別・帰住先別構成比(昭和55年)