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 昭和56年版 犯罪白書 第1編/第3章/第1節/3 

3 麻薬等の事犯

 I-69表は,最近5年間における麻薬事犯の検挙人員を見たものである。昭和55年では,麻薬取締法違反がやや増加し,158人であるが,うち,ヘロイン事犯が35人,LSD事犯が83人である。あへん法違反は264人で前年より増加しているが,うち,259人が不正栽培によるものである。大麻取締法違反は,51年の960人から55年の1,433人へ,約5割増加して,26年以降の最高値となり,55年の麻薬事犯全体の77.3%を占めるに至った。
 また,麻薬等の薬物には属さないが,シンナー及び接着剤等の有機溶剤濫用事犯(毒物及び劇物取締法違反)の激増が注目される。

I-69表 麻薬事犯の検挙人員(昭和51年〜55年)

I-14図 毒物及び劇物取締法違反送致人員の推移(昭和47年〜55年)

 I-14図は,シンナー等の濫用が規制された昭和47年から55年までの9年間について,同法違反の送致人員の推移を見たものであるが,47年の2,080人から55年の3万5,275人へ,約17倍の激増である。この事犯は少年の占める比率が高く,55年において78.5%(2万7,677人)であり,警察補導人員は,送致人員を含めて4万5,161人に上っている。
 有機溶剤は,日常生活の中で容易に入手できるので,青少年によって濫用されやすく,強い中枢神経抑制作用を有する有機溶剤の過度の吸入は死の危険を生じ,長期間の濫用は,肝臓・腎臓又は協調運動等の機能障害,あるいは精神分裂病に似た症状を引き起こし,また,酩酊状態下の犯罪を誘発するなど,個人的・社会的に極めて有害とされている。昭和55年における有機溶剤濫用による死者は,濫用死44人,自殺6人の計50人に及んでいる(警察庁調べ)。