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 昭和56年版 犯罪白書 第1編/第2章/第4節 

第4節 公害犯罪

 公害関係諸法がおおむね整備されるに至った昭和47年以降の全国検察庁における公害犯罪の新規受理人員を見ると,I-38表のとおりである。新規受理人員は,47年の2,613人から逐年増加し,51年に6,624人と最高に達し,その後は増減を繰り返し,55年は前年より165人減の6,440人となっている。47年を100とする指数で見ると51年が254で最も高く,55年は246となっている。

I-38表 公害犯罪検察庁新規受理人員(昭和47年〜55年)

I-39表 公害犯罪罪名別検察庁新規受理人員(昭和53年〜55年)

 I-39表は,最近3年間における公害犯罪の検察庁新規受理人員を罪名別に見たものである。昭和55年は,受理人員6,440人中,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反が4,273人(66.4%)で第1位を占め,次いで,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反が1,136人(17.6%),水質汚濁防止法違反が624人(9.7%)となっている。この三者で全体の93.7%(前年は92.6%)を占めている。廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反は54年まで一貫して増加していたが,55年には前年より85人(2.0%)減少し,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反は前年より90人(7.3%)減少したが,水質汚濁防止法違反は前年より96人(18.2%)増加している。
 警察庁の資料により,最近3年間について,産業廃棄物の不法投棄事犯に係る廃棄物排出量を業種別に見ると,I-40表のとおりである。昭和55年において,最も多量に廃棄物を排出した業種は,前年同様建設業で,全体の89.8%を占めている。次いで,前年の窯業・土石製造業に代わって農業が3.1%で続いている。55年において不法投棄された産業廃棄物の数量は約35万2,000トンで,前年より10万1,000トン(22.3%)減少している。これを種類別に見ると,建設廃材が約27万7,000トン(78.7%),汚でいが約4万6,000トン(13.1%)で,この両者で全体の91.8%を占めている。

I-40表 不法投棄産業廃棄物業種別排出量(昭和53年〜55年)

 海上保安庁の資料により,最近5年間における海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反の検察庁への送致状況を違反態様別に示すと,I-41表のとおりである。総数を見ると,昭和51年の1,404件から54年の1,094件まで減少してきたが,55年においては1,104件と前年より10件増加している。55年について違反態様別に見ると,船舶からの油排出違反が528件で前年より51件(10.7%)増加し,全体の47.8%とほぼ半数を占めている。次いで,廃船の規制違反が305件(27.6%),油記録簿備付・記載・保存義務違反が142件(12.9%),船舶からの廃棄物排出違反が52件(4.7%)と続いている。なお,直接海洋汚染に結びつく海上公害事犯(いわゆる実質犯)は898件で,全体に占める比率は81.3%となっており,前年に比べると,実数,比率ともわずかではあるが減少している。

I-41表 海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反の態様別送致件数(昭和51年〜55年)

1-42表 公害犯罪罪名別検察庁処理人員(昭和53年〜55年)

 I-42表は,最近3年間における公害犯罪の検察庁処理人員を罪名別に示したものである。昭和55年の処理人員総数は6,667人で前年より492人増加している。起訴人員総数は前年より66人減少して4,344人で,起訴率は65.2%(前年は71.4%)である。そのうち公判請求人員は64人で,公判請求の比率は1.5%(前年は1.9%)となっている。罪名別の起訴人員を見ると,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反が2,816人(全起訴人員の64.8%)で最も多く,そのうち公判請求人員は57人(全公判請求人員の89.1%)である。

I-43表 公害犯罪の法人・個人別処理人員(昭和51年〜55年)

 最近5年間における廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反並びに水質汚濁防止法違反の処理人員を法人,個人別に示すと,I-43表のとおりである。昭和55年について見ると,法人は,廃棄物の処理及び清掃に関する法律違反では786人(16.7%)で,前年より実数で305人,比率で5.5%増加している。海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律違反では221人(17.5%)で,前年より実数では23人増加しているが,比率ではやや減少している。水質汚濁防止法違反では232人(35.3%)で,実数で39人,比率で1.8%増加している。