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 昭和55年版 犯罪白書 第4編/第4章/第2節/4 

4 フランス共和国

(1) 犯罪の概観
 IV-32図は,フランスにおける1973年以降の犯罪発生件数及び検挙件数を見たものである。犯罪発生件数(交通犯罪を除く。)は,1973年から1978年までの6年間に,176万3,372件から214万7,832件へ21.8%増加したが,検挙件数は,86万8,915件から82万4,483件へ5.1%減少している。
 フランスでは,犯罪を重罪,軽罪及び違警罪の3種に分類している。重罪の刑は,死刑,無期の懲役・禁錮,5年以上10年以下又は10年以上20年以下の懲役・禁錮であり,軽非の刑は,2月を超え5年以下の拘禁又は2,000フランを超える罰金などである。違警罪の刑は,2月以下の拘禁又は2,000フラン以下の罰金などであるが,三者とも累犯加重をすることができる。これらの犯罪は,それぞれ,重罪法院,軽罪裁判所及び違警罪裁判所で処理することとされている。これら各刑事裁判所で有罪とされた者(違警罪については,加療8日以下の傷害など,軽罪に準ずる罪質を有する第5類のものに限る。)の罪種別有罪人員の推移を見ると,IV-33図のとおり,総数では,1965年に31万376人であったが,逐年おおむね増加傾向を示し,1975年には51万8,008人となっている。これら有罪人員の自由刑と罰金刑の比率を見ると,IV-34図のとおり,罰金刑が55%ないし63%,自由刑が36%ないし44%で,1975年は,罰金刑が59.2%,自由刑が40.8%となっている。また,自由刑の執行猶予率を見ると,IV-35図のとおり,1965年に44.2%であったが,1970年の法改正で刑の執行猶予の適用範囲が拡大されたため,1975年には57.1%となっており,1965年を12.9%上回っている。なお,保護観察付執行猶予者の人員は漸増を続けており,1975年には1万2,524人(自由刑中に占める比率5.9%)となっている。

IV-32図 犯罪(重罪・軽罪)発生件数及び検挙件数

(2) 犯罪者の処遇
 フランスには,1979年6月1日現在,180の刑事施設がある。刑事施設は,中央刑務所(7),拘禁センター(13),拘置所(139),半自由センター(9),医療刑務所(3),少年拘禁センター(2),重警備区域(7)に分類されている。これら刑事施設の収容者数の推移を見ると,IV-36図のとおり,1975年の2万6,031人を最低として,以後,逐年増加傾向を示しており,1979年では3万3,315人である。このうち,未決拘禁者(統計上,控訴中の者を除いている。)は,IV-101表のとおり,1979年では1万2,329人(37.0%)となっていることが注目される。未決拘禁者1万2,329人(うち,女子524人)の内訳は,予審継続中で勾留期間が8月未満の者8,385人(68.0%),予審継続中で勾留期間が8月以上の者1,353人(11.0%),予審終了者2,208人(17.9%),現行犯逮捕された者383人(3.1%)である。

IV-33図罪種別有罪人員

 次に,受刑者について見ると,IV-102表のとおり,逐年増加傾向を示しており,1979年では1万9,148人である。このうち,1年を超える拘禁及び懲役・禁錮に処せられた者が1万1,625人で,全体の60.7%を占めている。

IV-34図 有罪人員の自由刑・罰金刑別構成比

IV-35図 自由刑有罪人員の実刑・執行猶予別構成比

IV-36図刑事施設収容人員フランス(1971年〜79年各1月1日現在)

IV-101表 刑事施設収容人員

IV-102表 受刑者の刑種・刑期別人員

 刑事後見(主刑の執行に引き続き,10年間刑務所に拘禁するものであり,仮釈放も許される。)を執行されている者は100人台で推移しており,大きな変化はない。また,受刑者の出所状況を見ると,IV-37図のとおり,仮釈放は10%台にすぎず,1978年における満期釈放と仮釈放の割合は,9対1となっている。

IV-37図 受刑者の出所事由別人員構成比

 フランスには,半自由制度及び帰休制がある。前者は,受刑者を継続的な監視なしに,自由な労働者と同一の条件の下で職業活動などに従事させる(ただし,刑事施設外での宿泊は認めない。)制度である。後者は,一定の期間,受刑者が刑事施設から離れることを許可する(この期間は,刑期に算入される。)制度である。IV-103表は,これらの制度について,その許可件数とこれに対する取消率又は失敗率(帰休の場合において,規定の時限までに刑事施設に戻らなかった場合の件数の比率である。)を見たものである。半自由,帰休共に,その許可件数は増加しており,半自由の取消率及び帰休の失敗率は減少している。

IV-103表 半自由及び帰休制度の許可件数と取消率・失敗率

IV-104表 保護観察委員会等監督下の監督種目別人員

 1978年末日現在,フランス全土に設置されている保護観察委員会(comitedeprobation)及び釈放者援護委員会(comited′assistanceaux11berea)の数は181であり,IV-104表は,これら委員会の監督下の監督種目別人員の推移を見たものである。居住制限(刑の言渡しを受けた者に対して一定の場所に立ち寄ることを禁止する付加刑の一つで,監督及び保護の処分を含むものである。)対象者の人員は減少しているが,仮釈放者及び保護観察対象者は増加している。仮釈放者の増加が緩やかであるのに対して,保護観察対象者の増加は著しく,1974年から,毎年,約6,000人から9,000人に近い増加を続けて,1978年では,1974年の2倍弱にあたる6万3,147人である。一方,これを監督する保護観察官の人員は,IV-105表のとおり,逐年わずかではあるが増加し,1979年では,常勤・非常勤合わせて596人となっている。しかし,保護観察官1人当たりの事件負担量は,1969年では91件,1975年では118件,1978年では145件と増加している。なお,保護観察対象者中前科歴のある人員も増加しており,1975年には1万4,524人であったが,1978年には3万512人となっている。

IV-105表保護観察官人員