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 昭和55年版 犯罪白書 第1編/第4章/第4節 

第4節 都市犯罪と警察機能

 犯罪の抑圧・防止において,第一次的機能を果たすのは警察であり,その効率性を最もよく示すのは,犯罪の検挙率であろう。

I-103表 主要犯罪別検挙率の国際比較

 I-103表は,各国の公的資料に基づいて,各都市及び国の主要5罪種に関する検挙率を1978年について見たものである(資料の関係で,一部の都市のみを対象とする。)。国別の検挙率を見ると,我が国は,全罪種において,最高の検挙率を示しているが,都市別に見ると,最高の検挙率は,殺人では西ベルリンの97.6%,強盗では東京の73.8%,傷害では大阪の92.2%,窃盗では横浜の57.4%,強姦では横浜の85.7%である。罪種別の検挙率を警察機能の効率性という点から見ると,殺人は被害者と犯人の間に面識関係があり,激情犯である場合が多く,また法益侵害の重大性から捜査活動が最優先的に指向されるなどの理由によって,他の罪種に比べて検挙率が一般に高くなる傾向があり,これに対し強盗は,概して被害者と犯人の間に面識関係がなく,計画的犯行である場合が多いなどの理由から検挙の困難性が高いと言われているが,人口約830万人の東京において,殺人の検挙率は96.3%(アメリカの6大都市は71.2%),強盗は73.8%(西ベルリンは42.1%,アメリカの6大都市は22.5%)という高率を示している。また,目撃証人などの証拠関係から検挙が最も困難な窃盗においても,東京は45.5%(西ベルリンは27.0%,アメリカの6大都市は16.4%)と相対的にかなり高い検挙率を示している。
 次に,犯罪発生件数と警察官数の関係を1978年について見ると,I-104表のとおりである。警察官1人当たりの人口よ,東京で373人,ニュ-ヨークで307人であり,人口に対する警察官数は東京が少ないのにかかわらず,犯罪発生件数の大きな較差を反映して,警察官1人当たりの発生件数は,東京の9件に対し,ニューヨークは23件となっている。

1-104表 犯罪発生と警察官数の国際比較

 このような数字によれば,我が国の都市警察の機能は,外国のそれに比べて,相当に高い効率性を示していると言えよう。