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 昭和54年版 犯罪白書 第3編/第2章/第1節/2 

2 少年審判

 家庭裁判所は,[1]検察官から送致された犯罪少年,[2]警察から直接送致された犯罪少年及び虞犯少年,[3]都道府県知事又は児童相談所長から送致された触法少年及び虞犯少年等に対して審判を行う。
 III-36表は,昭和52年,53年及び50年以前の10年ごと(ただし,30年については,統計資料の関係で31年とした。)の家庭裁判所受理人員を事件の種類別に見たものである。53年における受理人員総数は,53万8,659人であり,そのうち,道路交通保護事件が56.8%を占め,一般保護事件については,業過が9.8%,虞犯が0.8%を占め,業過を除く刑法犯及び特別法犯は,あわせて32.6%となっている。53年は,すべての事件について前年より増加している。53年の受理人員総数を40年当時と対比させて見ると,ほぼ半減しているが,これは主として道路交通保護事件の減少によるものである。

III-36表 少年保護事件の家庭裁判所受理人員(昭和31年,40年,50年,52年,53年)

 家庭裁判所は,家庭裁判所調査官による少年の調査及び試験観察,少年鑑別所における鑑別の結果などを勘案して,少年の処分を決定するが,審判を開くまでもなく処理できるときは,審判不開始の決定をする。なお,審判開始後なんらの処分をする必要もないと認めたときは,不処分の決定をする。
 業過及び虞犯を除く一般保護事件についての,昭和52年,53年及び50年以前の10年ごとの家庭裁判所処理状況を見ると,III-37表のとおりである。53年の処理人員総数は14万2,634人であるが,そのうち,刑事処分相当として検察官に送致されたものは0.4%であり,年齢超過による送致を加えても0.6%にすぎない。53年に少年院送致及び保護観察の処分を受けたものは,いずれも前年より増加しているが,合計では10.4%にとどまっている。審判不開始及び不処分とされたものは,53年においていずれも前年より減少しているが,それでも,全体の88.6%を占めている。53年において,少年院送致及び保護観察の比率がそれぞれ前年より上昇したのは,52年以降開始された短期処遇を行う少年院への送致と交通短期保護観察とによるところが大きいが,それでもなお,30年当時における少年院送致及び保護観察の各比率に比べれば,それぞれおよそ三分の一及び二分の一に減少している。

III-37表 少年一般保護事件の家庭裁判所処理人員(昭和30年,40年,50年,52年,53年)

 III-38表は,昭和51年,52年及び50年以前の10年ごと(ただし,30年については,統計資料の関係で,33年とした。)の業過及び虞犯を除く一般保護事件中の中間少年及び年長少年について,家庭裁判所の処理状況を罪種別に示したものである。33年,40年及び50年以降について長期的に見ると,凶悪犯,粗暴犯及び特別法犯における保護処分の比率は近年上昇傾向にあるものの,いずれの罪種においても,検察官送致の比率は次第に低くなっている。特に,財産犯において,検察官送致の比率が33年の3.1%から52年の0.3%へと激減し,保護処分の比率もこの間29.9%から11.8%へと減少していることが注目される。
 昭和52年における業過及び虞犯を除く一般保護事件の家庭裁判所処理状況を罪名別に見ると,III-39表のとおりである。処理人員総数12万5,767人のうち,最も多いものは窃盗(63.7%)であり,毒物及び劇物取締法違反(10.0%),傷害(5.0%)がこれに次いでいる。刑事処分相当として検察官に送致された少年497人のうちでは,傷害が101人と最も多く,窃盗の95人及び強姦の55人がこれに次いでいる。なお,審判不開始及び不処分の比率は,総数では90.0%であるが,罪名別に見ると,外国人登録法違反が99.6%と最も高く,傷害致死が12.5%と最も低い。凶悪犯は,検察官送致及び保護処分となる比率が高いが,それでもなお,放火の45.2%,強盗の40.7%,強姦の31.6%は,審判不開始及び不処分となっている。

III-38表 中間・年長少年一般保護事件の罪種別家庭裁判所処理人員(昭和33年,40年,50年〜52年)

III-39表 少年一般保護事件の罪名別家庭裁判所処理人員(昭和52年)

III-40表 少年一般保護事件の前処分歴別家庭裁判所処理人員(昭和52年)

 家庭裁判所の処理結果には,少年の資質,年齢,環境,犯罪の罪質などとともに,少年の本件以前における家庭裁判所の処分歴も反映されている。昭和52年における交通関係の業過を除く一般保護事件の処理状況を処分歴別に見たのがIII-40表である。処分歴のない少年は,0.1%が検察官に送致され,5.5%が保護処分に付されているのに対し,処分歴を1回有する者は,検察官送致が0.5%,保護処分が21.8%となり,処分歴の回数が多くなるに伴ってこれらの比率も上昇し,処分歴を3回以上有する少年については,4.6%が検察官に送致され,36.4%が保護処分に付されている。

III-41表 交通事犯少年の家庭裁判所処理人員(昭和30年,40年,50年〜52年)

 III-41表は,昭和30年,40年及び50年以降における交通事犯少年の家庭裁判所処理状況を示したものである。業過(その大部分は,自動車交通によるものである。)の処理状況を見ると,検察官に送致されるものの比率は,40年当時は38.7%であったが,50年以降の推移を見ると,16.9%から低下を続けて52年には14.8%となり,また,少年院送致及び保護観察の比率は,30年当時は2.3%,40年には4.8%,そして50年には8.6%とほぼ10年ごとに倍増し,その後も上昇を続けて52年には13.8%となっている。道交違反の処理状況を見ると,30年当時は4.1%にすぎなかった検察官送致の比率は,40年には16.0%,50年には19.1%,51年には19.6%となったが,52年には前年より比率が下降して17.7%となり,また,少年院送致及び保護観察の比率は,30年当時0.4%にすぎなかったのに,40年,50年といずれも顕著に比率が上昇して52年には8.0%となっている。なお,交通事犯における保護処分は,ほとんどが保護観察によって占められており,少年院送致は極めて少ないが,52年の少年院送致人員は,前年よりほぼ倍増している。
 III-42表は,昭和30年,40年及び50年以降における虞犯少年に対する家庭裁判所の処理状況を見たものである。少年院送致及び保護観察に処せられる者は,実数も比率も50年以降上昇し,52年には954人,36.5%となっており,犯罪少年と比べて相当高い比率を示している。

III-42表 虞犯少年の家庭裁判所処理人員(昭和30年,40年,50年〜52年)

 なお,家庭裁判所の審判には,検察官は関与することができないが,弁護士,保護者などは少年のために付添人として出席することが認められている。実際上,弁護士たる付添人がつく事件はまれであり,昭和52年に終局決定のあった一般保護事件のうちこれに該当するものは694件である。また,家庭裁判所の処分に対して,少年や付添人は高等裁判所に抗告することができるが,52年におけるこの種抗告件数は,193件にとどまっている。