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 昭和54年版 犯罪白書 第1編/第3章/第3節/3 

3 執行猶予取消率の年次別推移

 本来の意味での執行猶予取消率の推移については,昭和53年版犯罪白書において初めて明らかにしたところであるが,前記50万人の電算化犯歴対象者中,23年以降有期懲役・禁錮の執行猶予に付,れた者について,その後再犯等により執行猶予を取り消された者の比率を保護観察の有無別に見ると,I-79表のとおりである。なお,現行の保護観察付執行猶予の制度は,29年に発足したものである。

I-79表 執行猶予取消率の推移(昭和23年〜50年)

 単純執行猶予者の執行猶予取消率は,昭和23年の場合の14.3%からいったん低下したあと,29年の18.3%まで上昇し,その後は42年の場合の6.6%までおおむね順調に低下を続けたが,以後起伏を示しながら,48年からは明らかに上昇傾向に転じており,執行猶予期間未経過者を含む50年の場合すでに10.6%となっている。
 保護観察付執行猶予者の執行猶予取消率は,昭和30年の場合の40.2%を最高とし,42年の22.1%を最低として,ほぼ単純執行猶予者の場合と同様の動きを示し,同様執行猶予期間未経過者を含む50年の場合すでに30.5%と34年以前に匹敵する高率となっている。
 昭和49年以降の執行猶予者中には,本調査期間(53年12月31日まで)中に執行猶予期間がいまだ経過していないものを含んでいるのにかかわらず,49年及び50年の場合の執行猶予取消率が,48年の場合よりも上昇しているのは,注目を要するものと思われる。また,保護観察付執行猶予者の執行猶予取消率は,単純執行猶予者のそれに比べると,2倍ないし3倍となっており,さきに執行猶予者の再犯率を見た際にも述べたとおり,保護観察付執行猶予の制度運用には検討を要する問題があるように感じさせるものがある。