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 昭和54年版 犯罪白書 第1編/第1章/第2節 

第2節 特別法犯の概況

 昭和53年における特別法犯検察庁新規受理人員を見ると,I-18表のとおり,総数で245万2,319人であるが,道交違反の230万8,157人(構成比94.1%)を除くと,14万4,162人である。前年と比べると,総数では16万3,021人(6.2%),道交違反を除く特別法犯では9,790人(6.4%)が,それぞれ減少している。
 道交違反を除く特別法犯の減少の主たる理由は,公職選挙法違反の減少によるものである。昭和52年には,第11回参議院議員通常選挙,地方選挙,参議院議員補欠選挙などが行われたのに対し,53年には,地方選挙(知事選10,市長選192)と参議院議員補欠選挙が行われただけであったことを反映して,公職選挙法違反による新規受理人員は,前年の1万5,274人から53年の3,776人に激減した。
 地方選挙(公職選挙法が準用される選挙等を含む。)を取り上げて,公職選挙法違反の違反態様別送致人員を昭和52年と53年について見ると,I-19表のとおり,両年共に買収・利害誘導が圧倒的に多く,52年では全体の94.1%,58年では86.9%を占めている。
 公職選挙法違反の減少に対し,覚せい剤取締法違反(4,476人増),風俗営業等取締法違反(1,241人増)の増加が著しい。
 最近5年間における保安関係,財政経済関係及び風俗関係の各特別法犯の動向は,I-20表ないしI-22表のとおりである。
 保安関係では,銃刀法,火薬類取締法,軽犯罪法の各違反は,いずれも昭和50年をピークとして以後減少している。酒に酔って公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律違反は,51年,52年と連続して増加したが,53年ではやや減少した。

I-18表 特別法犯の検察庁新規受理人員(昭和52年,53年)

I-19表 地方選挙等における公職選挙法違反の態様別送致人員(昭和52年,53年)

 財政経済関係では,法人税法違反が昭和53年にはやや減少したのに対して,所得税法違反はやや増加した。関税法違反は,51年から減少を続けている。出資の受入,預り金及び金利等の取締等に関する法律違反は,起伏を示しながら,53年では,49年の2倍以上に増加している。また,宅地建物取引業法違反も増加を続けていたが,53年にはやや減少した。
 風俗関係では,売春防止法違反と職業安定法違反が減少を続けているが,風俗営業等取締法違反は,昭和51年以降増加を続けている。児童福祉法違反は52年まで増加傾向にあったが,53年ではやや減少した。競馬法違反及び自転車競技法違反は,年次により増減を繰り返しているが,53年では前年よりやや増加した。
 なお,公害関係,道交法関係の特別法犯については,第2章で,麻薬・覚せい剤関係については,第4編第1章でそれぞれ詳述する。

I-20表 保安関係特別法犯の検察庁新規受理人員(昭和49年〜53年)

I-21表 財政経済関係特別法犯の検察庁新規受理人員(昭和49年〜53年)

I-22表 風俗関係特別法犯の検察庁新規受理人員(昭和49年〜53年)