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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第四章/二/3 

3 仮釈放事件の立件,審理,決定および釈放

 仮釈放の審理は,ほとんどすべて,矯正施設の長から申請があってから始まる。地方更生保護委員会は,施設の長から申請がなくても職権で事件を立てて審理を始めることができるが,その実例はきわめて少ない(V-4表)。申請があったら,地方委員会はすぐに審理事件として立件し,主査委員をきめて審理を始める。

V-4表 仮釈放事件の立件事由別人員―地方更生保護委員会(全国)(昭和32〜34年)

 審理の資料としては,身上調査書,申請書,環境調査調整報告書のほか,施設から送付された参考資料が用いられ,また,施設に備えてある,判決書や送致決定書の謄本,収容中の行状や成績の記録,書信簿,接見表,少年調査記録,分類調査票など種々の記録書類が参酌されている。帰住先が整っていない場合や,何か疑問がある場合には,特別に環境の調査または調整を委嘱し,あるいは戸籍照会その他の照会を発するなど,種々の方法で資料の収集が行なわれている。
 仮釈放に適するかどうかの心証は,このような資料による調査だけでは得られないので,主査委員は矯正施設に行って本人に面接をすることになっている。面接にあたっては,本人の陳述内容,態度,更生の決意等の諸点をよく見て,仮釈放に適するかどうかについて的確な心証を得ることにつとめる。また,本人に対して定めるべき特別遵守事項を具体的に考慮する。
 仮釈放審理の焦点は,仮釈放に相当するかどうかの判断であるが,これとともに審理中つねに考慮されていることは,仮釈放を本人の更生に役立たせることである。だから審理段階では,特別遵守事項や,釈放の時期や,指定帰住地などの問題が,すべてこの見地から具体的に考慮され,さらにまた,環境の改善調整や,帰住地のない者のための帰住地設定や,面接の際の助言指導など,調査判断の域をこえた積極的なケースワークの措置が行なわれている。
 したがって,審理には,かなり多くの日数を要する場合があり,その期間はV-5表でわかるように,一カ月以内から一年以上までさまざまである。仮出獄事件と仮退院事件とをくらべると,長くかかっているのは仮出獄事件の方に多い。

V-5表 仮釈放事件の審理期間別人員と率(昭和34年)

 主査委員の審理が終わると,事案は合議体の審議にかけられ,委員の評決で,許可または不許可(申請事件については申請棄却)の決定が行なわれる。
 仮釈放事件について,右のように地方更生保護委員会の許可決定があると,本人は,指定された釈放日に,施設から釈放される。釈放にさいしては,仮出獄,少年院仮退院,婦人補導院仮退院の場合は,仮釈放中遵守すべき遵守事項を示され,これを遵守する旨の誓約をしたうえで釈放され,指定された帰住地に帰住し,すみやかに保護観察所に出頭して仮釈放中(すなわち保護観察中)の心得を き,その助言指導を受け,かくして保護観察がはじまる。仮出場の場合には,遵守事項がないし保護観察も伴わないから,釈放時の手続も簡単である。