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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第三章/六/2 

2 累犯化の傾向

 婦人補導院の入院者は,総じて資質的に劣悪な条件をもっている者が多く,かつ,ほとんどの者が過去に相当期間の売春の経験をもっているので,これらの在院者に対する更生補導は,きわめて困難な実情にある。その一つの証左として,婦人補導院が発足してから,昭和三五年末までのわずか二年七カ月という短期間のうちに,再入者の率が年をおうごとに増加の傾向をたどっている事実があげられるであろう。今後の入院者についても,諸般の条件からみていわゆる累犯化の傾向が強くでてくるものと思われる。いずれにしても,入院者の大半は,売春婦のなかにおいてさえも,最下層に位置するものと思われ,売春以外に生活の手だてを見出す能力のない一群であり,将来も売春婦としてコゲついてゆく傾向にあるものと考えられる。
 入院者の累犯化の傾向に対して,他の諸方策においてとるべきことは多々あると思われるが,これはさておくとして,婦人補導院の当面する問題は,これにいかに対処するかということである。この問題に関連して,現在の補導期間六カ月は在院者の実情からみて,あまりにも短かすぎるという声がある。補導期間の延長は,将来検討の要があるものと思われる。しかし,いかに法律を改正して補導期間を延長してみても,対象者の質によっては,更生補導に限界があることも認めざるを得ない現実であろう。昭和三五年一二月,東京婦人補導院在院者から無差別に六〇名を抽出し,職業適性検査を実施したところ,技能的職業適性のある者は三一・六%にすぎなかったのである。