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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第三章/四/1 

四 少年鑑別所

1 入所者の増減と鑑別およびその特質

(一) 収容関係

 少年鑑別所の収容者の増減は,特に警察の取締状況を反映して激しく増減する。たとえば,選挙の取締に重点がおかれる時期にあっては,収容者は全般に少なく,歳末取締の場合には,急激にふえるといった具合に,年間の収容者の増減に定まった傾向がない。
 しかし,各年の収容状況を比較すると,IV-9表に示すように,昭和二九年以降,昭和三一年を除いては年々増加の傾向にある。この増加傾向は特に大都市においていちじるしい。

IV-9表 少年鑑別所入所人員と指数(昭和29〜34年)

 六大都市と全国との比較によってみると,昭和二九年の六大都市における鑑別所の入所人員は,全体の四三%であるのに対し,昭和三四年には四七%に増加しており,また昭和二九年を一〇〇とした昭和三四年の全国増加率は一二四であるのに対し(IV-9表参照),昭和二九年を一〇〇とした昭和三四年の六大都市の入所人員は一三六である。
 非行の種類については,IV-10表の示すように,男子において窃盗が第一位を占め,恐喝,傷害等の暴力犯,猥褻,強盗の順であり,女子においては,虞犯が第一位,窃盗が第二位となっている。刑法犯においては一般の傾向と変わりないが,道路交通法違反少年の入所は概して少ない。また,女子少年の虞犯が多いが,その内容は主として窃盗,売春である。

IV-10表 入所少年の非行種別・性別人員の百分率(昭和34年)

 年齢については,一五,一六,一七才が増加し,一九才以上は減少し一四才以下には変動がない(IV-11表参照)。

IV-11表 少年鑑別所新収容者の年齢別百分率(昭和29,34年)

 矯正局の調査によれば,入所度数については,例年一定した比率を示しており,初めての入所者が全体の六六%,二回目が二一%,三回が八%,四回が三%,五回以上が二%という比率になっている。

(二) 鑑別関係

 鑑別取扱人員の増加は,収容少年の増加にくらべ,きわめていちじるしい(IV-12表参照)。これは主に法務省関係機関の鑑別請求,一般からの鑑別依頼が年々増加して行うことによるものである。ことに昭和三四年における一般依頼件数は急増し,鑑別所が各地域社会でその機能を認識され,世間一般が鑑別所の手を借りて非行性の早期発見,早期処置に乗り出した結果と思われる。今後も,この一般依頼は急カーブで増加するものと推定される。また,法務省関係鑑別請求の増加は,部内の相互援助,特に検察庁と鑑別所の提携が密接になったことを示している。

IV-12表 少年鑑別所の鑑別取扱人員と指数(昭和29〜34年)

 また鑑別内容についての注目すべきことは,最近における道路交通法違反者の増加に伴い,各地において違反者の鑑別を求める声が多いので,数カ庁において最新の運転適性検査器等を取り入れ,性格検査とあわせて違反少年に実施していることである。鑑別の成果があがりつつあるので,今後は運転検査器の整備などにより,この方面にも鑑別所が活躍することになろう。