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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第二章/二/4 

4 起訴率と未済率

 検察官の起訴の方式は,公判請求と略式命令請求および即決裁判請求の三つに分かれる。しかし,即決裁判の請求は道交違反事件だけに限られるものだから,これを除外して,昭和三四年における道交法令違反を除く全事件につき,公判請求と略式命令請求別の人員および不起訴の人員を示し,あわせて,このうち公安犯罪に関するものを示すと,III-9表のとおりとなる。

III-9表 起訴および不起訴の処理別人員と起訴率等(昭和34年)

 これによると,全事件では起訴と不起訴の割合は四九対五一であるが,公安犯罪では二三対七七であって,公安犯罪の起訴率がいちじるしく低いことがわかる。また,全事件では起訴の総数のうちその三四・三%が公判請求され,残る六五・七%が略式命令請求であるが,公安犯罪では公判請求が起訴総数の八七・三%を占め圧倒的な高率を示している,これは公安犯罪が略式手続になじみにくいものであることを示すものといえるだろう。次に不起訴の内訳をみると,全事件では起訴猶予が不起訴総数の七二・九%を占めているが,公安犯罪についてみると,起訴猶予はその総数の五六・二%であって全事件より低率である。
 なお,昭和三四年度における検察庁の既済,未済別の人員を道交違反を除く全事件と公安犯罪とについてみると,III-10表のとおりである。検察庁で受理した事件について検察官が起訴,不起訴またはその他の処分(たとえば,中止,移送,家庭裁判所への送致等)を行なったときは,その事件は既済となるが,これらの処分が終わらないときには未済として残ることになるわけであって,この未済は,翌年度の受理の中に「旧受」として含まれることになる。全事件においては,未済率(既済と未済の計で未済の数を除したもの)がわずか三・七%にすぎないが,公安犯罪については,二八・七%といちじるしい高率を示している。未済率の高いことは,その事件の処理にいちじるしく時日を要することを示すものといえるから,公安犯罪はこの意味からしてもその処理に少なからざる困難を伴うものがあるといえよう。

III-10表 検察庁における既済・未済別人員と率(昭和34年)