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 昭和36年版 犯罪白書 第二編/第一章/一/3 

3 罪名別起訴猶予率

 刑法犯につき,起訴不起訴の終局処分がなされたもののうち起訴猶予の占める比率は,昭和三四年において三四・六%であるとさきに述べたが,刑法犯の主要な罪名について起訴猶予率をみると,II-7表のとおりである。

II-7表 主要罪名別起訴猶予・起訴率(昭榔33,34年)

 これによると,起訴猶予率の高いものは,横領,住居侵入,窃盗,賍賄,賍物関係,失火,公務執行妨害,詐欺,収賄,恐喝であり,いずれも刑法犯の平均起訴猶予率を上回るが,これに反して,起訴猶予率の低いものは,強盗致死傷,殺人,強盗強姦,強盗,強姦の悪質犯罪であり,これに次ぐものは,偽証,過失傷害,放火,強制猥褻,賭博富くじ等である。一般に財産罪について起訴猶予率の高いのは,示談,弁償等の犯罪後の情状が考慮されるためといえるが,贈収賄の高率であるのは,いかに理解すべきであろうか。
 なお,偽証は起訴猶予率が一四・八%と低率であるが,起訴率も四・三%ときわめて低率である。これは嫌疑なしと裁定されることが多いためであって,この種事件の証拠の蒐集の困難なことを物語っているといえよう。
 起訴率の高いものは,強盗強姦,強盗致死傷,過失致死傷,殺人,強盗,傷害,放火,賭博富くじ,脅迫,強姦,恐喝,賍物関係の順であり,これに反して起訴率の低いものは,偽証,私文書偽造,公文書偽造,横領,詐欺,強制猥褒,収賄,贈賄の順である。私文書偽造,公文書偽造,強制猥褻は,起訴率も起訴猶予率もともに低率にある罪種であり,賍物関係は,ともに高率を示す罪種である。