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 昭和36年版 犯罪白書 第一編/第二章/四 

四 財産犯罪

 財産犯罪の検挙人員はI-6図によると,最近減少の傾向にあるようにみえるが,その発生件数等を参照すると,必ずしも楽観を許さないものがある。特に注目されるのは,全刑法犯発生件数中の約七〇%を占める窃盗の発生件数が最近増加していることである。犯罪統計書によって,昭和二八年以降の窃盗の発生,検挙件数の推移をみると,I-15表に示すように,その発生件数は昭和二九年以降増加し,ある程度減少している年もあるが,おおむね高い水準にある。しかるに,その検挙件数は減少の傾向にあり,検挙率は昭和二八年の六〇%から昭和三四年の四八%へと減少している。

I-15表 窃盗犯発生・検挙件数等(昭和28〜34年)

 それでは,最近はどのような手口の窃盗が多いのであろうか。犯罪統計書によってこれをみると,付録-1表に示すように,最も多いのは侵入窃盗であって,その占める比率は,昭和二九年の約三六%から昭和三一年は約三一%まで低下したが,昭和三三,三四年には増勢に転じ約三三%となっている。これに次ぐのが自転車窃盗であって,昭和三四年はやや増加して,約二〇%を占めている。その他は通常のいわゆる,かっぱらい,すり,万引等であって,これらは多少の増減はあるが全体の構成には大きな変化は認められない。また,自動車窃盗は最近大幅に増加しているが,その実数は少なく,総数の一%弱にすぎない。
 詐欺は,犯罪統計書によると,検挙人員,発生件数ともに減少している。その手口は,寸借詐欺,商品詐欺,無銭飲食等に分類されているが,付録-1表に示すように,その構成には大きな変化はなく,一般的に減少している。また,強盗の手口は,同表に示すように,侵入強盗が昭和二九年の約四八%から昭和三四年の約三六%まで減少し,それだけ非侵入強盗が増加している。