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 昭和53年版 犯罪白書 第3編/第2章/第3節/3 

3 作業及び職業訓練

 累犯受刑者に対する処遇の中心であるとも言えるものに,作業の賦課があり,出所後社会において,犯罪を犯さないで生活するための能力を付与することを目的として行われている。作業としては,職業的技能及び知識の習得,勤労意欲のかん養,規律ある生活の維持,共同生活への適応,忍耐心及び集中心の養成等に役立つ生産的で,かつ,有用な作業を確保するための努力が払われている。
 それとともに,累犯受刑者に対しても,更生意欲があり,かつ,適性がある者に対しては,職業訓練が行われている。
 III-36表は,昭和52年12月末のB級系統受刑者に対する職業訓練の実施状況を,収容分類級のA級系統受刑者のそれと対比して見たものである。また,52年度のB級系統受刑者についての資格・免許の取得状況を見たのが,III-37表である。職業訓練の訓練生の人員比では,B級系統受刑者は27.0%で,A級系統受刑者の73.0%に比べて低いが,資格・免許の取得状況では,取得総数中,B級系統受刑者がその33.3%を占めている。B級系統受刑者の免許・資格取得にかける意欲には,A級系統の受刑者に比べて低くなく,むしろ高いとも言えるのである。
 鹿児島刑務所所轄下の構外作業場である吉松農場(昭和53年3月以前は霧島農場と呼ばれていた。)では,B級受刑者に対する職業訓練を開放的処遇の条件下で行っている。そこでは,45年10月以来建設機械科訓練を実施しており,53年6月末までに182人が訓練を修了して出所している。それらの者の更生状況とその就職状況及び刑務所への再入状況を53年6月末現在で見たのが,III-38表である。再入している者の率は,出所者の28.6%であり,B級受刑者全体の再入率(出所後約5年間で55.6%)と比べて,はるかに低くなっている。また,更生している者の約ク割が,職業訓練の種目である建設機械業に従事していることが注目される。

III-36表 収容分類級別職業訓練種目別人員(昭和52年12月31日現在)

III-37表 収容分類級別資格・免許取得状況(昭和52年度)

III-38表 職業訓練修了者の就職状況(吉松農場)(昭和53年6月30日現在)