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 昭和52年版 犯罪白書 第3編/第3章/第2節/1 

第2節 女性犯罪の国際比較

1 女性犯罪の動向

 最近,女性犯罪の世界的増加が指摘されているが,1970年を基準として1975年までのアメリカ(アメリカ合衆国),西ドイツ(ドイツ連邦共和国)及び我が国の女性犯罪の動向を示すと,III-96表ないしIII-98表及びIII-12図のとおりである。
 まず,アメリカにおける女性犯罪の動向を見るため,ほぼ指標犯罪に相当する主要刑法犯,すなわち,殺人,過失致死,強姦,強盗,加重暴行傷害,不法侵入,窃盗及び自動車盗の男女別逮捕人員の推移を検討すると,1970年の男性逮捕人員は,105万8,169人であり,女性逮捕人員は,21万5,614人であって,女性比は16.9%であったが,1975年では,男性逮捕人員は1.45倍に増加して153万1,100人となったのに対して,女性逮捕人員は1.72倍に増加して37万711人となり,女性比は19.5%にまで上昇している。
 次に,西ドイツにおいては,1970年の刑法犯検挙人員(交通犯罪及び国家防衛法違反を除く重罪及び軽罪)は,男性が85万997人,女性が17万5,866人であったが,1975年では,男性が91万7,718人,女性が19万5,278人であって,男性は1.08倍,女性は1.11倍となっている。その女性比は,1970年の17.1%から1975年の17.5%へと上昇している。
 我が国においては,1970年の交通関係業過を除く刑法犯検挙人員は,男性が33万3,344人,女性が4万7,506人であったが,1975年には男性検挙人員は30万2,685人に減少しているのに,女性検挙人員は6万1,432人に増加し,その女性比は,1970年の12.5%から1975年の16.9%へと上昇している。

III-96表 主要犯罪の男女別逮捕人員アメリカ(1970年,1974年,1975年)

III-97表 刑法犯(重罪・軽罪)男女別検挙人員西ドイツ(1970年,1974年,1975年)

III-98表 主要罪名別刑法犯・男女別検挙人員日本(1970年,1974年,1975年)

III-12図 女性犯罪の推移

 III-12図に示すとおり,この3箇国の女性犯罪に共通の動向としては,まず,いずれの国においても女性犯罪の増加が見られることである。そして,アメリカ及び西ドイツにおいては,男女共に犯罪の増加が見られる中で,女性犯罪の増加率が男性犯罪の増加率を上回っているのであるが,我が国の場合には,男性検挙人員が減少しているのに,女性検挙人員は増加していることに特色が見られる。