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 昭和52年版 犯罪白書 第2編/第3章/第5節/1 

1 我が国における公衆参加の状況

 我が国で,更生保護制度が確立されたのは,犯罪者予防更生法,更生緊急保護法等一連の更生保護関係法規が整備された第二次大戦後のことである。
 そして,更生保護の諸活動は,少年及び成人の対象者に対する保護観察から犯罪前歴者への援助活動,犯罪予防活動等に至るまで,多くの民間篤志家・団体の協力を得て行われている。現在,更生保護事業に従事している主要な篤志家・団体には,保護司及び更生保護会を中心に,BBS(ビッグ・ブラザーズ・アンド・シスターズ),更生保護婦人会会員,協力雇用主等がある。
 まず,保護司は,保護観察官とともに対象者処遇に当たるほか,犯罪の予防,地域社会の浄化のため活動している。この保護司は,保護観察所長が推薦した者のうちから,保護司選考会の意見を聞いたうえ法務大臣によって委嘱されるが,その要件には,社会的信望があり,熱意と時間的余裕を有し,生活が安定し,健康で活動力を有することなどがある。任期は2年である。
 全国795の保護区を単位として4万6,230人(昭和52年1月1日現在)が配置されている。保護司が行った活動に対しては,国から実費弁償金が支払われる。
 保護司の実態(昭和52年1月1日現在)を見ると,比較的年齢が高く(平均年齢は60歳),在職年数が長く(10年以上の経歴者が49.2%),また,職業別では,農林・漁業等従業者,宗教家,商業従業者,主婦,無職者,会社・団体役員,公務員,会社員でその82.3%を占めている。保護司は,自主的に各保護区,都道府県,全国を単位として保護司会を結成している。
 次に,更生保護会は,本章第3節で述べたように,罪を犯した者のための民間保護施設である。更生保護会を経営するには,法務大臣の認可を必要とし,職員の資格及び処遇方法等には,一定の基準が定められている。更生保護会は,国から委託費や補助金等を受け,また,共同募金の配分を受けたり,一定条件の下に寄付金を募集することができ,更に,直接の寄付に対しては税制上の優遇措置が執られるなど,その経営の強化に配慮がなされているが,その経営基盤は全般に不安定である。
 BBSは,非行少年の良き友だちとなり,その更生を援助しようとする有志青年の団体である。昭和52年1月1日現在,全国で552団体があり,8,740人が,これに所属している。BBS会員の要件としては,年齢が,おおむね18歳から30歳までで,社会奉仕の精神と余暇を有することなどがあるだけで,特に学歴,職業等についての制限はない。
 更生保護婦人会会員は,犯罪者や非行少年の更生に側面から協力するために活動する有志の婦人で,昭和52年1月1日現在全国で986団体,21万4,762人を数えている。会員のほとんどは,既婚の婦人から成り,更生援護金品の援助,更生保護思想の普及や宣伝,更生保護会や矯正施設の慰問等を行っている。
 更生保護会,BBS及び更生保護婦人会の会員は,いずれも,保護司とほぼ同じ構成単位でそれぞれ連合組織を結成している。
 協力雇用主は,保護観察対象者や犯罪前歴者等に職場を提供し,その改善更生に協力する篤志事業家である。保護観察所では,篤志事業家の発見に努め,その協力を得て,犯罪者が直面する就職面での不利益や障害の除去を図っている。
 このほか,主として全国の保護観察所の所在地に,更生保護事業の連絡及び助成を行う団体として,保護観察協会ないし更生保護協会があり,保護司会や更生保護会の活動の助成,BBS会や更生保護婦人会の育成・指導,更生保護関係従事者の教養訓練,犯罪予防のための調査,更生保護思想の普及及び宣伝,地域社会の浄化活動等に従事している。更に,全国的な指導・連絡助成団体として,日本更生保護協会がある。