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 昭和52年版 犯罪白書 第2編/第2章/第2節/5 

5 教育活動

 受刑者に対する教育活動は,入所時教育,出所時教育,教科教育,通信教育,生活指導,篤志面接委員による助言・指導,体育及びレクリエーション指導などの形で行われている。II-9図は,法務総合研究所の調査により,各分類級の受刑者を収容する刑務所25施設で実施した4箇月間(昭和50年1月,4月,7月,10月)の教化活動(44種目)について,実施時間数の多い活動の上位30位までを示したものである。

II-9図 25庁における教化活動別・総実施時間(4箇月‐昭和50年1,4,7,10月累計)

 入所時教育は,新たに入所した受刑者に対し,受刑の心構え,施設の機構,所内規則,処遇の概要,保護関係の調整,釈放後の生活設計等の教示及び指導に重点を置いて行われている。
 また,出所時教育は,矯正教育の総仕上げとしての意味を持ち,社会情勢,出所に関する諸手続,更生援護・職業安定・民生福祉等の制度や利用手続などの解説及び教示,釈放後の生活設計に関する助言・指導,出所に当たっての心身の調整など,出所後,社会生活への円滑な移行に役立たせるためのプログラムが準備されている。
 生活指導は,受刑者の自覚を促し,規則正しい生活及び勤労の精神を養い,共同生活を円滑に営み得るような態度,習慣,知識,技術等をかん養することをねらいとするもので,分類級ごとにその処遇内容に変化が付けられている。その具体的な指導項目としては,前図(II-9図)に示された自治的活動(4位)及び体育訓練(5位)をはじめ,読書指導,道徳教育,集団訓練,趣味活動,教養講座,礼儀作法等の各種目があり,そのうち,1又は2以上の種目が処遇分類級に応じて処遇重点事項に指定されている。なお,全受刑者を対象とし,又はグループ活動として,一般講演,社会見学,クラブ活動,集会,委員会活動(給食,図書,放送等の各委員会活動)などが行われ,また,個別又は集団カウンセリングが実施されている。
 教科教育は,E級,G級,S級,O級,N級など,特定の処遇分類級に属する受刑者に対して,その処遇項目の一つとして実施されている。教科内容について見ると,義務教育未修了者に必要な課程を履習させるほか,義務教育修了者中の学力の低い者に対して,国語,数学等基礎的教科が補習教育として行われている(少年受刑者については,第3編第1章第6節参照)。更に,向学心のある者に対しては,高等学校通信制課程を受講させている。なお,職業指導の一環としても,珠算,簿記等の資格を取得できる科目の指導も行われている。昭和51年中の教科教育履習人員は4,677人で,その内訳は,義務教育修了者3,193人,同未修了者570人,高等学校中退者404人,同卒業者350人などとなっている。

II-43表 篤志面接委員数(昭和51年12月3日現在)

I-44表 篤志面接相談内容別実施状況(昭和51年)

 通信教育は,昭和24年以来実施されており,主として学校通信教育と社会通信教育により,受刑者に一般教養向上の機会を与えている。通信教育は,教科教育の一環としても行われ,受講者には,受講に要する費用の全額を国が負担する公費生と,原則として受講者自身が負担する私費生とがあるが,52年3月現在で過去1年間の受講生は,公費生・私費生合わせて2,060人で,受講生の多い講座名としては,書道・ペン習字,簿記・事務,電気・無線,英語,自動車,建築,レタリング,司厨士,高校講座,和裁,洋裁などがある。
 篤志面接委員制度は,受刑者各人の持つ精神的な悩みや,家庭,職業,将来の生活設計などの問題を解決するため民間の学識経験者の助言・指導を得るもので,昭和28年実施以来,逐年活発化し,受刑者の処遇に定着するに至っている。51年末現在の篤志面接委員数は,II-43表のとおり,合計1,054人で,51年におけるその面接回数は,II-44表のとおり,合計9,718回である。なお,委員1人当たりの来訪回数は5.1回,面接回数は9.2回となっている。
 更に,信仰を有する者,宗教を求める者及び宗教的関心を有する者のために,民間の篤志宗教家(「教誨師」と呼ばれる。)による宗教教誨を受ける機会が与えられている。宗教教誨は,受刑者がその希望する宗教の教義に従って,信仰心を培い,徳性を陶やし,進んで更生の契機を得ることに役立たせようとするものである。無期その他長期の受刑者に対する宗教教誨は,特にその心情の安定に資している。昭和51年末現在における教誨師の人数は1,311人で,各宗各派にわたっている。51年中における宗教教誨実施状況は,II-45表のとおりである。

II-45表 宗教教誨実施状況(昭和51年)