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 昭和52年版 犯罪白書 第1編/第3章/第2節/1 

1 主要犯罪の動向

 I-10図は,1960年から1975年までのアメリカ,イギリス,西ドイツ及び我が国における殺人,強盗,強姦及び窃盗の発生率(人口10万人当たりの発生件数)の推移を示したものである。

I-10図 主要犯罪発生率の推移   (1960年〜1975年)(1960年=100)

 1975年における殺人の発生率は,アメリカが9.6,西ドイツが4.8,イギリスが2.3,日本が1.9となっているが,これを1960年の発生率を100とする指数で見ると,最も増加率の高いのは西ドイツで,218となっており,イギリスが192,アメリカが188でこれに次ぎ,日本は68と減少している。
 次に,1975年における強盗の発生率は,アメリカが最も高く,218.2となっており,以下,西ドイツが33.4,イギリスが23.0,日本が2.1となっているが,これを1960年の発生率を100とする指数で見ると,イギリスが523,アメリカが363,西ドイツが321,日本が31となっている。
 また,1975年における強姦の発生率は,アメリカが最も高く,26.3となっており,以下,西ドイツが11.1,日本が3.3,イギリスが2.1となっている。
 これを1960年の発生率を100とする指数で見ると,最も増加率の高いのはアメリカで,274となっており,イギリスが191でこれに次いでいるが,他方,西ドイツは96,日本は49といずれも減少している。
 最後に,1975年における窃盗の発生率は,アメリカが3,274.2,西ドイツが3,088.1,イギリスが2,483.0,日本が927.3となっているが,これを1960年の発生率を100とする指数で見ると,最も増加率の高いのはアメリカで,269となっており,イギリスが234,西ドイツが201でこれに次ぎ,日本は83と減少している。
 以上から明らかなように,1960年以降,これら主要犯罪の発生率は,我が国で減少傾向にあるのに対し,アメリカ,西ドイツ及びイギリスでは,西ドイツの強姦が横ばい状態にあるのを除けば,すべて増加傾向にあると言える。また,1975年におけるこれら主要犯罪の発生率は,アメリカが他の国に比べて圧倒的に高く,以下,おおむね西ドイツ,イギリス,日本の順となっていることがわかる。罪種別に見ると,最近,強盗が急激に増加していることが日本を除く各国に共通の現象であるが,強姦等の性犯罪の発生率の動向は国によって異なっていると言うことができる。また,第1節で述べたように,我が国を含むこれらの国では,近代化の進んだ社会における一種の社会病理現象とも見られる薬物関係犯罪の激増や,少年犯罪の増加,都市犯罪の悪質化等の問題が共通の課題となってきているように思われる。