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 昭和52年版 犯罪白書 第1編/第1章/第7節/1 

第7節 精神障害者の犯罪

1 精神障害者の犯罪の特殊性

 昭和51年における成人の刑法犯検挙人員のうち,精神障害者又はその疑いがあると認められた者は,I-41表に見るとおり,0.9%であり,例年ほとんど変化はない。これを罪名別の人員で見ると,窃盗が最も多く,以下,傷害,殺人,詐欺,放火,暴行の順であり,検挙人員中に占める割合では,放火と殺人の高率が目立っている。この傾向も例年のとおりである。
 法務省刑事局の資料によると,昭和46年から51年までの6年間に,全国の地方(区)検察庁で処理された事件及びそれに対応する裁判所で判決のあった事件で,心神喪失により不起訴若しくは無罪となり又は心神耗弱により刑の減軽を受けた者は,2,948人である。その罪名別・病名別の内訳は,I‐42表のとおりで,罪名別では,殺人が最も多く,以下,放火,傷害・暴行の順になっており,病名別では,精神分裂病が圧倒的に多いが,アルコール中毒もかなりの数に上っている。更に,この2,948人のうちの再犯者1,249人について,本件罪名と直近の前科・前歴罪名との関係を見たのが,I-43表である。重ねて窃盗を犯した者が最も多いことは,一般の累犯傾向においても見られるところであるが,殺人,放火,傷害・暴行,強姦・強制わいせつ等の犯罪を繰り返す者がかなりの数に上っていること,また,傷害・暴行の前科・前歴を持つ者で本件において殺人,放火を犯している者の多いことが目立ち,窃盗の前科・前歴を持つ者にも同様の傾向が見られることなどは,精神障害者による犯罪の特殊性の一端を示すものと言えよう。

I‐41表 成人刑法犯検挙人員中精神障害者の比率(昭和51年)

I‐42表 心神喪失・心神耗弱者の罪名別精神診断結果(昭和46年〜51年の累計)

I‐43表 心神喪失・心神耗弱者の本件と直近の前科・前歴罪名との関係(昭和46年〜51年の累計)

 次に,少年の一般保護事件について見ることとする。昭和50年に家庭裁判所の終局処分の決定があった少年16万2,453人のうち,精神判定(少年鑑別所の資質鑑別,その他家庭裁判所の調査段階における少年の精神状態に関する判定をいう。)を受けた少年1万1,079人(6.8%)について,非行名別精神障害者の比率を見たのがI-44表である。そのうちの精神障害者557人について見ると,人員では,窃盗が最も多く,比率では,放火,脅迫,わいせつ,殺人が目立つ。

I-44表 一般保護事件終局人員中の非行名別精神障害者の比率(昭和50年)