前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和51年版 犯罪白書 第3編/第1章/第4節/1 

1 鑑別状況

(1) 鑑別人員

 昭和50年における少年鑑別所の鑑別受付状況は,III-47表に示すとおり,総数4万168人である。別年に見られる主な特徴は,家庭や学校からの一般少年の鑑別の著しい減少,保護観察所からの依頼鑑別の急増,家庭裁判所からの請求による収容鑑別の増加等である。これら鑑別人員総数のうち,交通事犯少年の鑑別実施人員を取り出してみると,III-48表に示すとおりで,例年,在宅鑑別の方が多くなっている。

III-47表 少年鑑別所の鑑別受付状況(昭和48年〜50年)

III-48表 交通事犯少年鑑別実施人員(昭和48年〜50年)

(2) 収容鑑別少年の概要

 昭和50年中に家庭裁判所からの請求により,収容鑑別を終了した少年について,その概要を述べる。
 まず,知能指数については,III-49表に示すとおりで,その分布状況は,昭和49年と比べてほとんど変わっていない。しかし,20年前の30年と比べると,その差異はかなり顕著であって,知能指数90以上109以下の者の構成比が大幅に増加し,79以下の者と110以上の者の構成比が減少している。いわゆる普通知能を持った少年が収容少年の中で高い割合を占めてきているのである。なお,これらの少年の精神診断について見ると,診断の対象となった少年1万2,885人のうち,精神薄弱が2.8%,精神病質,神経症がそれぞれ0.7%,0.1%で,これらの診断に,てんかん等を加えて精神障害と診断された少年は5%弱であり,その構成比には,ここ十数年問大きな変動は見られない。

III-49表 知能指数段階別人員の構成比(昭和30年,40年,48年〜50年)

 次に,少年の年齢,学歴等と非行の種類との関係を見ると,III-50表及びIII-51表のとおりである。

III-50表 家庭裁判所関係収容鑑別終了者の年齢層と非行の種類(昭和50年)

III-51表 家庭裁判所関係収容鑑別終了者の学歴と共犯の有無・非行の種類(男子)(昭和50年)

 年齢については,男子において最も多い年齢層は,18歳以上で,総数1万195人のうちの56.4%を占め,16歳・17歳(32.8%)がこれに次いでいる。女子において最も多い年齢層は16歳・17歳で,18歳以上が最も少なくなっている。
 年齢層と非行の種類との関係については,男子では,どの年齢層も自動車盗を含む窃盗が多く,そのうち自動車盗は,低年齢層になるに従って,その比率が高くなっている。また,虞犯は,15歳以下の年齢層において高い比率を示している。一方,年齢層の高まるに従ってその比率が高くなっているのは,強姦・わいせつ及び暴力行為等処罰に関する法律・銃砲刀剣類所持等取締法,道路交通法違反などの非行である。
 女子では,どの年齢層においても,虞犯と自動車盗以外の窃盗が高率である。この自動車盗以外の窃盗については,年齢層の高まるに従って,その占める比率も高くなっている。これに対して,虞犯は,年齢層が低くなるほど,その比率が高くなっている。
 収容鑑別男子少年の学歴については,高校進学歴を有する者は4,276人で,総数の約42%に及んでいる。しかし,この進学者のうち卒業した者は約15%で,他は在学中(約15%)又は中退者(約70%)であり,仮に在学中の者が全員卒業したとしても,卒業率は約30%ということになり,鑑別所入所少年には高校中退者が多いと言える。
 また,学歴別に共犯の有無や非行の種類を見ると,中学,高校在学者に共犯のある者の比率が高い。更に,学歴別に非行の種類,共犯,性別を関連づけてみると,高校在学者の粗暴犯,性犯罪,凶悪犯について共犯のある者の比率が高い。また,中学在学者による自動車窃盗は,そのほとんどが共犯のある者である。高校中退者については,高校在学者と同じ傾向が見られる。以上のことから,学校不適応の男子には,集団による粗暴な非行に走る者が多いと言える。
 女子については,どの学歴群においても単独犯が多いが,暴行,傷害,脅迫,恐喝等の粗暴犯については,中学卒業以上のどの学歴群においても共犯のある者の方が多くなっている。
 これらの収容鑑別少年のうち,昭和50年に審判決定があった少年について,その鑑別判定別人員を示すと,III-52表のとおりである。在宅保護の判定が構成比において,前年より約2%減少し,一方,中等少年院の判定は,構成比において約4%の増加を示している。

III-52表 鑑別判定別人員の構成比(昭和48年〜50年)

 これを審判決定別人員で示すと,III-53表のとおりで,保護観察,中等少年院等の審判決定が増加している。

III-53表 審判決定別人員の構成比(昭和48年〜50年)