前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第5章/第2節/1 

1 犯罪傾向の進んだ受刑者の諸特性

 II-8図は,人格的特性を見る指標の一つとして,これらの分類級別に知能指数の分布を見たものである。知能が普通域(知能指数90〜109)以上にある者は,YA級52.0%,YB級53.7%,B級41.3%となっており,YA級及びYB級ではB級より優れた知能段階にある者が多い。

II-8図 分類級別知能指数の構成比

 また,性格的にも,YB級は,YA級と同様,率直で,さい疑的でなく,人格的により柔軟である者が少なくないという調査結果が出ている。
 次に,環境的側面における特質をは握する一指標として,分類級別に家族関係良否の状況を見たのが,II-9図である。家族との折り合いが悪く,その関係が不良な者は,YA級で約1割,YB級で約2割,B級で約3割となっており,総じて若年受刑者は,B級に比べて家族との結び付きが強く,良好な関係を保っていると言える。

II-9図 分類級別家族関係良否の構成比

 また,受刑者の欲求,志向,態度,更には価値意識といったものを「意識態度」として総括して調査したところによると,YB級受刑者については,[1]収容生活の日常身辺的な事項に対して不平・不満を持ちやすく,要求がましい,[2]現実の処遇をより否定的,拒否的に受け止め,将来を暗く見通している,[3]施設や職員に対して否定的な意識を持つ反面,収容者仲間に対しては親和的な接近を求めている,[4]将来への展望がなく,せつな的で安易かつ自己中心的な意識態度が強い,などの諸点を挙げることができ,他の分類級の者の意識態度とは,対照的ないしかなり格差のあるものとなっている。
 次に,犯罪性の側面からYB級受刑者の特徴を見ることとする。犯罪傾向の進度を見る指標として,初発犯罪年齢(II-10図),保護処分歴の有無(II-11図)及び暴力組織加入歴の有無(II-12図)を見ると,YB級受刑者は,いずれの指標においても,他の分類級の者に比べて犯罪性の進行をうかがわせる高い数値を示している。すなわち,初発犯罪年齢において,14歳未満の早発犯罪を犯した者は,B級の8.6%,YA級の10.4%に対して,YB級は19.1%であり,また,保護処分前歴のある者は,YA級及びB級の約30%ないし40%に対して,YB級は78.5%の高率を示し,そのうち少年院送致歴のある者の割合は,YA級の8.2%,B級の30.0%に対して,YB級では67.2%に達している。更に,暴力組織加入歴の有無においても,加入歴のある者は,YB級では50.3%を占め,YA級及びB級よりはるかに高い比率を示している。

II-10図 分類級別初発犯罪年齢の構成比

II-11図 分類級別保護処分歴の有無等構成比.

II-12図 分類級別暴力組織加入歴の有無構成比

 最後に,この調査結果からYB級受刑者について見られたその他の特性を列挙すると,[1]罪種においては,YA級では凶悪犯,性犯罪が高率を占めているのに対して,YB級及びB級では財産犯,粗暴犯が大多数を占めていること,[2]犯行の態様においては,YA級に偶発的,機会的犯行が多いのに対して,YB級及びB級では習慣的,計画的な犯行が多いこと,[3]アルコール及び薬物等の嗜癖においては,YB級ではYA級及びB級よりその経験のある者の比率が高いこと等の諸点が認められる。