前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第4章/第4節/2 

2 更生緊急保護の実施状況

 更生緊急保護として行う具体的措置には,保護観察所が自庁で行う帰住のあっ旋・金品の給与・食事の給与等の一時保護及び更生保護会に委託して行う保護施設収容を伴う宿泊・食事付宿泊とそれに付随する教養,訓練,就職援助,環境調整等の継続保護の二つの形態がある。更生緊急保護は,このように,単に宿泊や食事等を供与するにとどまらず,広く生活の指導その他の補導を含む福祉的内容を持つのである。
 II-76表は,最近5年間の更生緊急保護事件の受理・処理状況及び昭和50年中における事件の種別ごとの内訳である。更生緊急保護措置を決定した人員は,逐年減少傾向をたどり,この10年間でほぼ半数に減少してきたが,50年にはその傾向が止まり,前年より1,159人増加して9,874人に達した。この増加現象は,主として経済不況の影響が社会的弱者と言えるこれらの対象者の上に現れたとも見られるので,今後の動向には注意を要する。50年の受理人員を事件の種別で見ると,刑の執行終了者が7,506人(76.0%)と大多数を占め,起訴猶予者の1,685人(17.1%),刑の執行猶予者(判決未確定者及び保護観察の付かない判決確定者)の678人(6.9%)がこれに続いている。前年に比べて,事件の各種別とも増加していること,保護措置を執らないことを決定したものが497人と前年同様多数あること,近年該当者がなかった売春防止法による補導処分終了者が5人見られたことなどをその特色として指摘することができる。

II-76表 更生緊急保護事件の受理及び処理人員累年比較(昭和46年〜50年)

 更に,保護措置の内訳を自庁保護と委託保護について表示すると,それぞれ,II-77表及びII-78表のとおりである。昭和50年における自庁保護の総数は5,342人(前出II-76表中の自庁と自庁及び委託の合計)で,前年に比べて726人の増加となっている。他方,更生保護会に新たに委託された者は4,681人であり,前年に比べて619人の増加になっている。なお,50年中に保護を受け終わった者は新たに委託された者とほぼ同数の4,643人であり,50年末現在,委託による保護中の人員は565人で,前年に比べて38人の増加である。これらの委託の内容は,例年どおり,そのほとんどが食事付宿泊の供与である。

II-77表 自庁保護の実施人員(昭和50年)

II-78表 委託保護の実施人員(昭和50年)