前の項目   次の項目        目次   図表目次   年版選択
 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/2 

2 新受刑者

 裁判の確定により,新たに刑務所に入所した懲役・禁錮・拘留の自由刑受刑者を「新受刑者」という。

(1) 新受刑者の数

 II-32表に示すとおり,昭和50年の新受刑者総数は,2万6,158人である。新受刑者数は,23年に7万694人と戦後最高の人員を記録したが,その後は,多少の起伏を見せながらも漸次減少してきている。50年は,前年に記録した戦後の最低人員を434人だけ上回った(II-6図参照)。

II-32表 新受刑者の性別・年齢層別人員の比率(昭和20年,30年,40年,50年)

II-6図 新受刑者人員の推移(昭和20年〜50年)

(2) 新受刑者の性別

 同表によって,新受刑者の性別を見ると,昭和50年においては,男子の2万5,641人に対し,女子は517人(総数の2.0%)で,女子の比率は低い。この女子の比率は,37年の3.5%から46年の1.9%まで逐年低下し,その後は,49年の1.8%を最低に,2%前後を維持している。

(3) 新受刑者の年齢

 同表によって,新受刑者の年齢を見ると,昭和50年では,20歳代の者が全体の40%弱を占めて最も多く,30歳代の者が三分の一強を占めて,これに次いでいる。
 戦後における年齢層別構成比の推移を見ると,まず目につく特色は,過去十数年来,20歳代を主とする若年層の構成比が低下し,30歳代以上の年齢層の構成比が増加してきていることで,この傾向は,特に男子において著しい。これをやや細かく見ると,戦後,まず,20歳未満の年齢層の構成比が低下したが・これは20歳代の増加として吸収され,次に,20歳代が低下するが・これは30歳代の増加として吸収されるという年齢上昇の波状傾向が見られる。また,近年,40歳代及び50歳以上の年齢層が増加しているが,これは戦前の構成比に近づきつつある現象とも言えよう。

(4) 新受刑者の国籍

 新受刑者を国籍別に見ると,II-33表のとおりである。戦後における外国人の構成比は,多少の変化はあるが,ほぼ低下の傾向をたどり,昭和50年では,3.5%となっている。

II-33表 新受刑者の国籍別人員と比率(昭和20年,30年,40年,50年)

(5) 新受刑者の刑種と刑期

 新受刑者の刑種別人員の推移を見ると,II-34表のとおりである。昭和50年では,懲役が95.7%を占めており,禁錮は4.2%で,拘留は0.1%に満たない。33年を起点として急増した禁錮受刑者は,46年には2,982人(全体の11.0%)となってピークに達したが,その後は減少に転じ,50年では,ピーク時の約三分の一となっている。減少の主たる理由は,業務上過失致死傷による禁錮の減少である。

II-34表 新受刑者の刑種別人員と比率(昭和20年,30年,40年,50年)

 次に,新受刑者の刑期を見ると,II-35表のとおりで,昭和50年では,懲役について,刑期6月以下の者が18.1%で,前年を0.3%下回っているが,過去の推移に照らして見ると引き続き高い比率を保ち,これを含めた刑期1年以下の懲役新受刑者は51.7%と,過半数を占めている。この刑期1年以下の者が全懲役新受刑者中に占める割合は,42年以降おおむね増加してきており,50年では,前年に引き続いて5割を超えたものである。なお,無期は39人である。

II-35表 新受刑者の刑期別人員の比率(昭和20年,30年,40年,50年)

 禁錮については,昭和50年では,約90%までが刑期1年以下の者によって占められている。

(6) 新受刑者の罪名

 新受刑者の罪名について見ると,II-36表のとおりである。昭和50年においては,刑法犯が85.3%で,その比率は45年を最大として減少の傾向を見せ,また,特別法犯は14.7%で,前年に引き続き増加している。

II-36表 新受刑者の罪名別人員の比率(昭和30年,40年,50年)

 刑法犯のうちでは,窃盗が最大の35.2%を占め,以下,業務上(重)過失致死傷,傷害・暴行,詐欺,恐喝の順で,この順位は,昭和47年以降変わらない。このうち,業務上(重)過失致死傷は,36年以降逐年増加し,46年には最大の17.5%を示したが,以後,低下の傾向をたどっている。30年以降おおむね低下の傾向にあった罪名では,窃盗,強盗,詐欺,横領があるが,ここ一両年では,窃盗及び詐欺は,やや増加の傾向を示している。なお,傷害・暴行は,34年に7%台になった後,ほぼ8%台ないし9%台を維持しており,次に,殺人は33年に2%台になった後,3%に近い水準を維持している。更に,暴力行為等処罰法違反が,30年以降増加して,40年以降は3%台を維持しているのが注目される。
 特別法犯では,近年,覚せい剤取締法違反及び道路交通法違反が上位を占め,割合の推移で見ると,売春防止法違反を除いては,一般に増加傾向を示している。まず,覚せい剤取締法違反は,昭和33年以降急激に低下して0.3%ないし0.4%の低位にあったが,47年以降逐年顕著に増加し,50年では,前年を上回って6.1%に達し,道路交通法違反を抜いて首位に立った。次に,道路交通法違反は,40年以降増加傾向を見せ,その後,44年及び45年にわずかに低下したが,46年以降増加し,50年には,前年に続き5%台を維持している。

(7) 新受刑者の累犯と非累犯の別

 II-37表は,新受刑者のうちの有期懲役受刑者について,刑法上の累犯とそれ以外のものとに分けて,その比率を見たものである。昭和50年では,51.2%が累犯である。累犯の比率の推移を見ると,27年以降約56%ないし58%を占めていたところ,41年以降低下し,48年及び49年の両年には50%を下回ったが,50年では,再び50%を超えたものである。

II-37表 新受刑者の累犯・非累犯別人員の比率(昭和20年,25年,30年,35年,40年,45年,50年)

(8) 新受刑者の初入と再入の別

 新受刑者を入所度数別に見ると,II-38表のとおりである。再入者(入所2度以上の者)の割合は,昭和46年(50.6%)までおおむね減少の傾向にあったが,47年から増加の傾向を見せ,50年では,前年を2.3%上回っている。

II-38表 新受刑者の入所度数別人員の比率(昭和33年,35年,40年,45年,50年)

 II-39表は,昭和50年における新受刑者を初入者と再入者とに分けて,罪名別の構成比を見たものである。刑法犯について見ると,初入者では,窃盗が最も多く,業務上(重)過失致死傷がこれに次ぎ,再入者では,窃盗が半数近くを占めて最も多く,以下,傷害・暴行,詐欺の順となっていて,初入者に多い業務上(重)過失致死傷は2.0%にすぎない。初入者における業務上(重)過失致死傷は,45年に初めて窃盗を上回って首位となり,以来,49年まで首位に立ってきたが,50年では,窃盗に次いで2位となった。特別法犯については,初入者では,道路交通法違反及び覚せい剤取締法違反が,数年来引き続き,1位ないし2位を占め,再入者では,近年,逆に覚せい剤取締法違反が首位で,道路交通法違反がこれに次いでいる。なお,麻薬取締法違反及び売春防止法違反が低位を維持していることが目につく。

II-39表 新受刑者中初入者と再入者の罪名別比較(昭和50年)

 再入受刑者について,前刑出所後本犯までの期間(「再犯期間」という。)を見ると,II-40表のとおりである。昭和50年においては,再入受刑者の26.6%が前刑出所後6月未満で,44.6%が1年未満で,それぞれ,再犯を犯しているが,近年,再犯期間はわずかながら延伸する傾向にある。

II-40表 新受刑者中再入者の再犯期間別構成比の累積比(昭和20年,25年,30年,35年,40年,45年,50年)

(9) 新受刑者中初入者の執行猶予歴及び保護処分歴

 新受刑者のうち,初めて入所した受刑者について,執行猶予歴及び保護処分歴のある者の割合を見ると,それぞれ,II-41表及びII-42表のとおりである。執行猶予歴のある者は,昭和50年では41.2%で,単純執行猶予が多い。執行猶予歴のある者の割合は,47年以降増加の傾向を見せている。また,保護処分歴のある者の割合は,41年に23.0%を示し,その後は49年まで逐年低下してきたが,50年では,前年の割合に比べて1.2%増加し,17.6%となった。

II-41表 初入受刑者の執行猶予歴別人員と比率(昭和41年,45年,50年)

II-42表 初入受刑者の保護処分歴別人員と比率(昭和41年,45年,50年)

(10) 新受刑者の教育程度

 新受刑者の犯行時学歴別構成比は,II-43表のとおりである。新受刑者中,中学卒業以上の者の占める割合は.年々増加してきていたが,昭和50年では,前年とほぼ同じく86.9%となっている。

II-43表 新受刑者の犯時学歴別人員と比率(昭和50年)

(11) 新受刑者の入所前職業

 新受刑者の入所前(犯行時)職業を見ると,II-44表に示すとおりで,昭和50年における有職者は,新受刑者総数の59.3%に当たり,前年の割合を6.2%下回った。新受刑者の有職者率が・60%を割ったのは,38年(59.3%)以来のことである。

II-44表 新受刑者の犯時有職者職業別・男女別人員の比率(昭和50年)

(12) 新受刑者の精神状況

 昭和50年における新受刑者の入所時調査による知能指数段階別構成比は,II-45表のとおりである。通常,知能が劣るとされている知能指数79以下の者は,男子で35.1%,女子で46.6%を占めている。また,精神診断の結果を見ると,精神薄弱,精神病質などの精神障害者は,男子では7.2%,女子では9.9%となっている。

II-45表 新受刑者の知能指数段階別人員と比率(昭和50年)