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 昭和51年版 犯罪白書 第2編/第3章/第1節 

第3章 矯正

第1節 矯正処遇の原則及び基本制度

 受刑者の処遇は,受刑者を矯正し.一般社会生活に復帰させることを目的とする。この目的を達成するため,受刑者に対する矯正処遇は,できる限り個々の受刑者に適した方法で行い,かつ,その実施に当たっては,関係機関はもとより,民間の篤志家,受刑者の家族等との連係に努めなければならない。
 次に,この受刑者の処遇の個別化に資するため,入所時及びその後随時分類調査を行い,個々の受刑者ごとに定める個別的処遇計画を立て,これに基づいて矯正処遇を行わなければならない。すなわち,受刑者処遇の基本制度としては,[1]個別的処遇計画を効果的に実施するための分類処遇制度,[2]円滑な社会復帰に資するための閉鎖的処遇から一定の規制の下における開放的な処遇への移行による段階的処遇等の制度が要請される。
 およそこれらの受刑者処遇の原則及び基本制度は,1955年ジュネーブで開催された犯罪防止及び犯罪者処遇に関する第一回国際連合会議で決議された「被拘禁者処遇最低基準規則」でも明らかにされているところであって,諸国の矯正立法及び受刑者処遇の実際は,この基調に立って行われている。もとより,我が国の矯正においても,この受刑者処遇の原則及び基本制度は,行政上は既にある程度実現されているのであるが,これに法律的基礎を与え,総じて受刑者の地位を確立することは,現代の矯正立法に課されている任務である。
 監獄法の改正は,多年にわたる懸案であったが,昭和51年3月27日,法務大臣は,その諮問機関である法制審議会の第79回総会において,「監獄法を改正する必要があると考えるので,その改正の骨子となる要綱を示されたい。」との諮問を発し,その際,法務省から,審議に資する趣旨で47項目の「監獄法改正の構想」も提示された。同構想における改正の方向は,何よりも行刑の[1]近代化(形式,内容とも時代に即したものとする。),[2]国際化(国際連合の「被拘禁者処遇最低基準規則」のほか,諸外国の立法に示された世界の思潮と水準を考慮する。),[3]法律化(被収容者の権利義務に関する事項その他処遇に関する重要な事項は,できるだけ,法律で明確にする。)を図ろうとするものである。