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 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第3章/第3節 

第3節 少年の交通犯罪

 少年犯罪全体に占める交通犯罪の比率は,近年やや低下の傾向を示しているものの,昭和49年に交通関係の業務上(重)過失致死傷により警察に検挙された少年は4万7,132人で,少年刑法犯検挙人員の29.0%を占め,自動車等の運転に関する道路交通法違反による少年の送致人員は21万7,365人で,少年特別法犯送致人員の93.4%に及んでおり,少年についても交通犯罪の防止は依然として重要な課題である。
 まず,交通犯罪全体のうち,少年によって犯された事件の占める割合を見ることとする。III-139表は,最近2年間について,業務上過失致死傷及び重過失致死傷の検察庁新規受理人員のうち,少年の占める割合を見たものであるが,それぞれの割合はおおむね低下傾向を示しており,昭和49年では,業務上過失致死傷で9.9%,重過失致死傷で25.0%となっている。少年の重過失致死傷の占める割合が大きいのは,無免許運転をして事故を起こす者が多いためである。次に,III-140表は,最近5年間について,道路交通法違反総取締件数とその中に占める少年の割合を見たものである。これによると,49年では,少年の取締件数は80万9,277件で前年より4万178件増加しているが,総取締件数に占める割合は9.2%で,前年とそれほど変わっていない。

III-139表 少年の業務上(重)過失致死傷検察庁新規受理人員(昭和48年・49年)

III-140表 道路交通法違反少年事件累年比較(昭和45年〜49年)

 また,昭和49年における少年の道路交通法違反を態様別に見ると,III-20図[1]のとおりであり,これを成人事件について見た同図[2]と比較すると,その間に著しい相違があることがわかる。すなわち,成人事件では,無免許運転が2.0%であるのに対し,少年の場合には11.5%と大きな割合を占め,その実数も9万3,357件に及んでいる。このように,無免許運転や無免許運転による人身事故の占める割合の多いことが,少年の交通犯罪の特徴となっている。

III-20図 少年及び成人の道路交通法違反の態様別百分比(昭和49年)

 速度違反は,成人,少年ともに1位を占めており,各総数中に占める割合は成人の方が大きいが,毎時25キロメートル以上の速度違反が速度違反全体に占める割合について見ると,少年では27.8%(成人では14.6%)で,成人の速度違反に比べると危険性の高いものが多い。また,道路交通法違反全体のうち,危険性の高い無免許,酒酔い(酒気帯びを含む。),速度違反(毎時25キロメートル以上)の合計が占める割合を見ると,昭和49年では,成人で12.4%,少年で21.0%となっており,この点でも,少年の道路交通法違反は危険性の高い態様のものが多いといえよう。
 次に,交通犯罪を犯した少年が,家庭裁判所においてどのような終局決定を受けているかを最近5年間の業務上(重)過失致死傷と道交違反について見ると,III-141表及びIII-142表のとおりである。刑事処分相当を理由とする検察官への送致率は,業務上(重)過失致死傷で,昭和4年の29.8%から48年の19.8%へと逐年低下してきており,不処分及び審判不開始の割合が44年の64.6%から48年の72.9%へと上昇している。道交違反について見ると,45年8月から交通反則通告制度が少年に対しても適用され,軽微な事犯が家庭裁判所に送致されなくなったことに伴い,46年には,処理総数が大幅に減少するとともに,不処分及び審判不開始の割合が低下し,検察官送致の割合が上昇した。47年以降では,検察官送致の割合がわずかながら低下の傾向を示し,不処分及び審判不開始の割合が上昇の傾向を示している。

III-141表 業務上(重)過失致死傷の家庭裁判所終局決定人員と構成比(昭和44年〜48年)

III-142表 道交違反の家庭裁判所終局決定人員と構成比(昭和44年〜48年)