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 昭和50年版 犯罪白書 第3編/第1章/第2節/3 

3 少年犯罪と地域社会

(1) 地域差

 犯罪の発生は,地域によってかなりの差異がある。従来からも,都市は農村に比してその発生率が高く,財産犯が多いなどの指摘がなされてきた。最近における社会的,経済的諸条件の変化は,地域と犯罪との関係にも様々な変容をもたらし,都市と農村との単なる対比だけでは理解し難い複雑な様相を呈するに至っている。
 少年犯罪においても,若年労働者の大都市流入に伴う少年犯罪の大都市集中の問題,あるいは大都市周辺の衛星都市や地方の中小都市など都市化や産業化の著しい地域への少年犯罪の拡散化の傾向等が指摘されるようになっている。
 III-27表は,法務省特別調査によって,犯行地を大都市,中小都市及び郡部に分け,これらの地域別に罪名別構成比を見たものである。いずれの地域においても,窃盗の割合が前年より大幅に増加して過半数を占めているが,中でも,中小都市における割合が最も高く,76.6%を示している。これに次いで高いのは,各地域を通じて,暴行・傷害,脅迫・恐喝となっているが,地域的に興味ある傾向を示すものとして,構成比は小さいが,郡部における暴行・傷害,強姦・強制わいせつ,中小都市及び大都市における暴行・傷害,脅迫・恐喝などの粗暴犯の高率発生が注目される。

III-27表 犯罪少年の主要罪名別・地域別検挙人員(昭和49年)

(2) 犯行地と居住地

 III-28表は,法務省特別調査により,少年犯罪の行動圏を知る参考として,犯行地と居住地との関連を見たものである。犯行地が居住地と同一の市町村である場合が多く,全体の72.9%を占めており,それが他府県である場合は極めて少ない。このことは,少年犯罪の大部分が少年の居住地付近で発生しており,少年犯罪に関連する環境的要因として,居住地域が重要な意味を持っていることを示唆している。更に,犯行地が他府県に及ぶ者の割合を居住地域別に見ると,大都市居住者では10.7%,中小都市居住者では4.8%,郡部居住者では6.1%となっており,犯罪行動圏が広く,他府県に及んでいる者の割合は大都市居住者に多い傾向が見られる。

III-28表 犯行地と居住地との関連(昭和49年)

 この犯行地と居住地の関係から,行動圏を主要罪名別に見たのが,III-29表である。一般に,居住地域内での犯行率が比較的高い罪名としては,大都市における強姦,傷害,窃盗,暴行,恐喝,中小都市における暴行,傷害,窃盗,強姦及び郡部における暴行,傷害,窃盗が挙げられ,一方,比較的低い罪名は,全地域を通じて強盗となっている。しかし,大部分の罪名において,居住地域内での犯行が最も高率を占め,居住地域から遠ざかるに従って犯行率が低下する傾向を示しており,少年の犯罪行動圏の実態を示している。

III-29表 地域別・主要罪名別犯行地と居住地との関連(昭和49年)