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 昭和49年版 犯罪白書 第2編/第3章/第2節/1 

第2節 婦人補導院における処遇

1 概説

 婦人補導院は,昭和33年,売春防止法の一部が改正され,併せて婦人補導院法が施行されたことに伴い,同年5月,全国3か所(東京・大阪・福岡)に設置された矯正施設である。裁判所は,売春防止法5条(勧誘等)の罪を犯した20歳以上の女子に対して自由刑の執行を猶予するときは,その者を補導処分に付することができる。この補導処分に付された者を収容して,これに更生のために必要な補導を行う施設が婦人補導院である。補導処分の期間は6月とされている。
 売春防止法の罪の法定刑は6月以下の懲役又は1万円以下の罰金とされているので,同条の罪を犯した女子に対しても刑罰を科することは可能であるが,この種の女子は社会的弱者であることが多いことにこかんがみ,自由刑の執行を猶予したうえ補導処分に付することによって,更生の目的を達しようとするところに,この制度の特色がある。自由刑の執行猶予を前提条件とするが,婦人補導院からの退院者又は仮退院後補導処分の残期間を経過した者は,刑の執行猶予期間を経過したものとみなされ,刑の言渡が効力を失うこととされているので,一種の収容保護処分と解せられる。
 ここでは,婦人補導院における収容開始以来の動向を振り返りながら,その運営の状況を述べることとする。