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 昭和49年版 犯罪白書 第2編/第2章/第1節/2 

2 被疑者の逮捕と勾留

 捜査は,任意捜査を原則とし,強制捜査は,法律の定める条件を満たす場合に限って行うことができる。ここでは,強制捜査のうち,被疑者の身体を拘束する逮捕と勾留についてみることとする。
 まず,最近5年間における検察庁の既済人員のうち,刑法犯と特別法犯について,逮捕された者,勾留請求された者,勾留された者の各人員数とそれらが既済人員のうちに占める割合をみると,II-3表のとおりである。これによると,逮捕・勾留された者の実数及び逮捕された者の割合は,いずれも逐年減少している。勾留された者が既済総数に占める割合は,7.1%から7.6%の間を上下している。II-4表は,最近5年間にわたり,検察庁の既済人員について,警察から身柄拘束のまま送致されたもの及び検察庁で逮捕されたものの合計のうち勾留請求された人員及び勾留された人員の占める割合をみたものである。これによると,勾留請求された者の占める割合は,逐年増加し,昭和48年では71.1%となっている。勾留請求された者のうち勾留された者の占める割合は,96.0%ないし98.3%の間にある。II-2図は,昭和48年における検察庁の既済人員について,逮捕された被疑者の措置状況を逮捕後の措置別にみたものである。48年における道交違反を除く検察庁の既済総数は112万3,466人であるが,そのうち,逮捕された者は11.6%に当たる12万9,915人であり,総数の約9割は逮捕されずにいわゆる在宅事件として処理されており,捜査が任意捜査を原則としていることを示している。この逮捕された者のうち,検察庁で逮捕された者は810人で,逮捕された者総数の0.6%にすぎない。警察で逮捕された後,検察庁に送致する以前に釈放された者は1万3,908人で,警察における逮捕者総数の10.8%に当たり,残る89.2%の者は逮捕のまま検察庁に送致されている。

II-3表 検察庁既済事件の逮捕・勾留別人員(昭和44年〜48年)

II-4表 勾留請求人員及び勾留人員の比率(昭和44年〜48年)

II-2図 逮捕された被疑者の措置別人員(昭和48年)

 昭和48年中に,検察庁において逮捕した被疑者及び逮捕されたまま警察から送致を受けた被疑者11万6,007人のうち,22.7%に当たる2万6,320人が検察庁で釈放されている。検察官が勾留請求した者は8万2,429人で,勾留された者の数は8万949人である。勾留請求が却下された者は1,480人で,却下率は1.8%である。そのほか,少年鑑別所へ送致された者814人,家庭裁判所調査官の観護に付された者8人,逮捕中に公判請求された者2,133人,逮捕中に家庭裁判所に送致された者4,280人などとなっている。
 そこで,昭和48年における検察庁の既済人員のうち勾留された被疑者(観護措置が勾留とみなされる被疑者を含む。)8万1,021人について,検察庁でどのような処分を受けているかをみると,II-5表のとおりである。すなわち,検察官が起訴した者が73.7%,起訴猶予が16.2%,家庭裁判所送致が5.1%,嫌疑不十分などの理由で不起訴となった者が4.6%,中止処分が0.3%となっている。

II-5表 勾留被疑者の処分別人員(昭和48年)

 次に,勾留された被疑者の勾留期間について,期間を5日ごとに区分して百分率をみると,II-6表のとおりであり,勾留された者のうち,79.7%が10日の勾留期間内に処理され,残る20.3%が勾留期間を延長されている。なお,勾留期間20日を超える者が127人いるが,これは,同一被疑者が,他事件で引き続き勾留され,前の勾留期間と合計して20日間を超えることとなった例外的なものである。

II-6表 被疑者勾留期間別人員(昭和48年)