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 昭和48年版 犯罪白書 第3編/第1章/第4節/1 

第4節 少年鑑別所

1 鑑別状況

 昭和47年における少年鑑別所の鑑別受付人員は,III-68表の示すとおり,総数5万8,793人(男子4万4,855人,女子1万3,938人)である。これらを家庭裁判所関係,法務省関係(刑務所・少年院・婦人補導院等の矯正関係機関,地方更生保護委員会・保護観察所などの保護関係機関,検察庁)及び一般(一般の家庭,学校,その他の団体)の別にみると,家庭裁判所関係は,総数の44.5%に当たる2万6,190人,法務省関係は,総数の4.9%に当たる2,864人,一般は,総数の50.6%に当たる2万9,739人となっている。前述のIII-68表によって最近3年間の推移をみると,受付総数は,引き続き減少傾向を示している。総数に対する構成比からみると,法務省関係の4ないし5%に著しい変化はみられないが,一般が家庭裁判所関係をわずかながら上回っている。

III-68表 少年鑑別所の受付状況(昭和45年〜47年)

 家庭裁判所関係の鑑別については,対象少年を少年鑑別所に収容して行う場合(収容鑑別)と収容せずに行う場合(収容鑑別と区別するため,以下「在宅鑑別」という。)とがある。収容,在宅別に受付人員数をみると,昭和47年においては,収容鑑別は1万5,396人(受付人員総数の26.2%),在宅鑑別は1万783人(受付人員総数の18.3%)となっている。収容鑑別受付人員は逐年減少し,在宅鑑別受付人員は増加している。後者の増加は,交通事犯少年を主とした在宅鑑別請求の増加によるものである。
 次のIII-69表は,法務省矯正局の調査による交通事犯関係少年に対する鑑別実施人員を示したものである。昭和47年においては,少年鑑別所に収容して鑑別を実施した者1,119人,在宅のままで鑑別を実施した者9,599人,総数1万718人で,在宅で実施した者が総数の約90を占めている。

III-69表 交通事犯少年鑑別実施人員(昭和45年〜47年)

 なお,最近の鑑別受付状況において,収容によらない鑑別が比較的に多く求められていることは上述のとおりであるが,この傾向は,少年鑑別所の鑑別機能の発展として重視されるものである。収容鑑別の場合に比べ,収容によらない鑑別を実施する場合は,その鑑別の内容も方式も異なっているので,今後このための設備,機器の整備拡充が必要である。
 家庭裁判所関係の鑑別終了者の知能指数段階別人員と最近3年間のその構成比の推移を示したものがIII-70表である。例年のことながら,一般少年の知能指数の分布である100を頂点とした正規分布曲線に比較すると,鑑別少年の分布曲線はやや低い方にずれている。なお,その推移をみると,わずかながら,知能指数79以下は減少し,知能指数90以上が逐年増加し,収容少年の知能指数の分布は,年々一般少年のそれに接近している。

III-70表 知能指数段階別人員の比率(昭和45年〜47年)

 また,家庭裁判所関係の鑑別終了者の精神状況診断結果は,III-71表のとおりである。昭和47年において,知能が限界級のもの及び性格異常のものを含む準正常のものが例年のとおり最も多く,89.2%を占め,残りを精神薄弱4.0%,正常3.7%,精神病質1.9%,その他と分けている。なお,精神診断除外者がかなり多く,また,年々増加の傾向にあるが,これは,交通事犯関係少年を主とする在宅鑑別においては,鑑別の範囲がその目的や実施条件によって狭められ,自動車運転適性,同運転態度等に限られる場合が多いことによるものである。

III-71表 精神診断別人員の比率(昭和45年〜47年)

 次のIII-72表III-73表及びIII-74表は,非行の種類と年齢層,知能指数及び精神状況との関係を示すもので,家庭裁判所関係の男子の鑑別終了者について,法務省矯正局が調べたものである。これによれば,鑑別の終了した15歳以下の年少少年においては,その半数以上(57.1%)が窃盗を行った者であり,次いでは虞犯(16.7%)が多く,暴行・傷害・恐喝・脅迫が第3位(11.0%)となっている。16歳・17歳の中間少年においては,窃盗が第1位で同年齢層総数の37.6%であるが,次いで多いものは,道路交通法違反(18.8%)である。18歳以上の年長少年においては,窃盗は同年齢層総数の3分の1弱(32.1%)であり,道路交通法違反がこれに次ぎ(18.4%),暴行・傷害・恐喝・脅迫(14.8%)とともに,業務上過失致死傷(12.5%)が目立っている。

III-72表 家庭裁判所関係男子鑑別終了者の非行の種類と年齢層(昭和47年)

III-73表 家庭裁判所関係男子鑑別終了者の非行の種類と知能指数段階(昭和47年)

III-74表 家庭裁判所関係男子鑑別終了者の非行の種類と精神診断状況(昭和47年)

 知能指数79以下の群と100以上の群,その中間の80〜99の群に分けてみたIII-73表においては,窃盗がそれぞれ第1位にあるが,知能指数79以下の群においては,暴行・傷害・恐喝・脅迫が第2位であるのに対し,知能指数80以上の群では,道路交通法違反の占める比率が第2位を占めているのが目立っている。III-74表において,精神診断別にこれをみると,正常と診断された者は,道路交通法違反に最も多く,同診断の者の総数の47.8%を占め,次いで,業務上過失致死傷(24.8%)となっている。精神病質と診断された者には,窃盗も,多い(43.9%)が,暴行・傷害・恐喝・脅迫(13.4%),強姦・わいせつ(10.4%),強盗・殺人(10.0%)など粗暴な攻撃的傾向の非行の占める率が比較的大きく示されている。
 次のIII-75表は,家庭裁判所関係鑑別終了者のうち,審判決定のあった人員に対する鑑別判定別人員を示したものである。例年,その約60%は在宅保護と判定されているが,昭和47年においても58.3%を占める9,315人が在宅保護と判定されている。少年院や教護院・養護施設等への収容保護が適当と判定されたものは,4,570人,総数の28.6%であり,そのうち,少年院に収容することが適当と判定されたものは,4,395人,総数の27.5%である。最近3年間のこの推移をみると,実数においては,昭和47年の初等少年院を除いて,すべて減少しているが,その構成比においては,特別少年院を除き,初等・中等・医療の少年院収容を適当とする判定がわずかながら増加の傾向を示している。なお,保護不適の判定は,構成比においても一貫して減少傾向を示している。

III-75表 鑑別判定別人員の比率(昭和45年〜47年)

 これに対し,家庭裁判所における審判決定の状況を,審判決定別人員によってみたのが次のIII-76表である。

III-76表 審判決定別人員の比率(昭和45年〜47年)

 昭和47年において,鑑別終了者のうち,審判決定のあった人員は,保護観察が29.4%に当たる4,696人で,例年どおり最も多い。少年院送致は,初等少年院1.8%,289人,中等少年院12.2%,1,953人,特別少年院2.6%,417人,医療少年院1.5%,239人で,少年院の合計では2,898人,総数の18.1%となっている。最近3年間の推移をみると,実数については,昭和47年において,初等少年院送致と決定された者及び検察官送致と決定された者がわずかながら前年に比べ増加し,教護院・養護施設送致と決定された者が同数であるのに対し,そのほかはすべて減少している。これを総数に対する構成比の推移からみると,昭和47年において,不処分・不開始,保護観察及び中等少年院送致と決定された者は,わずかながら前年に比べ減少を示し,知事・児童相談所長送致と決定された者は変わらず,そのほかは,すべて前年に比べわずかながら増加を示している。なお,終局決定に至らないもののうち,試験観察に付せられる割合は増加を続けている。