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 昭和47年版 犯罪白書 第三編/第二章/一/2 

2 交通事故事件の最近の傾向

 最近五年間における,交通事故による死亡者数と負傷者数について,全国総数に占める七大都市所在の都府県の比率を示すと,III-107表のとおりである。これによると,死亡者と負傷者のいずれについても,おおむね,七大都府県の占める比率が減少して,交通事故事件の地方化ないし全国化の傾向がみられる。

III-107表 全国および七大都府県の死傷者数(昭和42〜46年)

 また,七大都府県における交通事故の死傷者は,実数についても,このところ減少し,昭和四六年には,死亡者で四八〇人,負傷者で二七,三二二人,前年より減少している。
 ただ,七大都府県のうち,福岡県のみは,前年より,死亡者が二六人,負傷者が五,九六七人増加しているので,福岡県を除く六大都府県の減少数が著しいことが認められる。
 次いで,昭和四六年の交通事故による死傷者数を,地方別に前年と対比してみると,III-108表のとおりである。これによると,関東,中部,近畿,中国の各地方における交通事故の死傷者数が,いずれも前年より減少しているのに対し,死亡者数では,北海道,東北,九州の三地方で前年より〇・八%ないし二・五%の増加をみせ,負傷者数では,東北,四国,九州の三地方で三・〇%ないし七・九%前年より増加している。このようにみると,四六年におけるわが国の交通事故による死傷者数の減少は,おもに,従来全体の六割余を占めてきた関東,中部,近畿の三地方において,死傷者数にかなりの減少がみられたことによるものといえるが,一方,総数における減少傾向のなかで,北海道,東北,四国,九州の四地方に死傷者数の増加がみられることが注目される。

III-108表 地方別死傷者数(昭和45,46年)

 なお,昭和四二年から四六年にかけて,最も増加率の大きかった地域は,死亡者については,千葉県(六九・九%増)で,以下山梨県(五七・四%増),茨城県(五五・五%増)がこれに次いでいて,東京都周辺の地域における死亡者の増加傾向を示し,負傷者については,大分県(一六六・七%増),石川県(一六六・六%増),徳島県(一六〇・七%増),栃木県(一四七・八%増),香川県(一三二・八%増)の順となっている。
 次に,昭和四六年における,一日当たりの死亡者数と負傷者数を,月別にみたのが,III-109表である。これによると,一日当たりの死亡者数では,八月が四九・八人と最も多く,一一月,一〇月,一二月がこれに続き,夏,秋の行楽時期と年末に死亡事故が多発したことを示している。一日当たりの負傷者数では,八月の三,〇六八人をピークに,その前後の七月,九月,一〇月が年間総数の一日当たりの負傷者数を一〇〇人以上上回っていて,この時期に交通事故の多発がみられる。

III-109表 月別死傷者数(昭和46年)

 次に,III-110表は,人身事故事件について,事故の主たる原因となった自動車の種別ごとに,それぞれ事故発生件数をみたものである。これによると,昭和四六年は,自家用自動車の事故が総数の七六・一%,事業用自動車の事故が一二・二%,二輪車の事故が一一・七%となっているが,最も多いのは,自家用普通乗用自動車による事故で,総数の三四・九%を占め,自家用普通貨物自動車による事故がこれに次いでいる。前年より増加したのは,自家用では,バス,普通乗用,軽四輪の各自動車による事故であり,事業用では,マイクロバス,二輪車では,自動二輪によるものであるが,人身事故発生件数の総数における減少傾向の中で,自家用普通および軽四輪乗用自動車の増加件数が一五,七二三件に及んだことは,いわゆるオーナードライバーによる交通事故の増加傾向が,依然として続いていることを示すものであり,注目される。一方,同表によって,自動車一万台当たりの事故件数をみると,一般に,自家用に比して,事業用の事故率がはるかに高く,ことに,ハイヤー,タクシーの属する事業用普通乗用自動車のそれが著しく高くなっている。

III-110表 事故の主たる原因となった車種別人身事故件数(昭和45,46年)

 次のIII-111表は,自動車による人身事故を,事故の類型別に分類して,最近五年間の状況をみたものである。これによると,昭和四六年の実数は,いずれの事故類型についても,前年より減少している。総数に対する構成比をみると,四六年は,車両相互の事故が六八・九%,人対車両の事故が二三・七%,車両単独が七・二%,その他が〇・二%で,車両相互の事故は,四二年以降,逐年増加し,人対車両の事故は,逆に逐年減少している。このように,事故類型別にみると,今後の見通しとしては,歩行者が被害者になる場合よりも,自動車間の衝突等の事故によって,運転者または同乗者が被害者となる場合の方が増加することになろう。

III-111表 事故類型別発生状況(昭和42〜46年)

 なお,警察庁交通局の統計によると,昭和四六年中の車両相互の事故のうち,最も多いのは追突事故で,全体の三三・九%を占め,次いで,出会いがしらの衝突事故の二一・一%,右折時の側面衝突事故一四・五%の順となっているが,人対車両の事故では,横断歩行中の事故が最も多く,人対車両の事故の五〇・一%を占めている。