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 昭和47年版 犯罪白書 第一編/第二章/一一/3 

3 ドイツ

 ドイツにおける一九六〇年から一九七〇年の主要刑法犯(重罪および軽罪)の発生件数の推移および構成比をみたのがI-84表である。同表により,一九六〇年の各罪名別発生件数を一〇〇とする指数で示すと,一九七〇年において,最も増加しているのは,放火であり,その指数が二三三となっているほか,強盗・強盗的恐喝の二二八,殺人の二〇四,窃盗の一八一といずれも相当の増加を示している。一方,最も減少率の高いのは,堕胎で,一九七〇年の指数が一八と低減し,そのほか,傷害致死で三五,横領で六六と減少している。このように,ドイツでは,放火の増加が顕著であることと,わが国で減少の傾向にある強盗,殺人などの凶悪犯罪が増加している特徴がみられる。

I-84表 主要刑法犯(重罪・軽罪)発生件数(ドイツ)(960,1962,1964,1966,1968,1970年)

 次に,I-84表により,一九七〇年における主要刑法犯の構成比をみると,窃盗が最も多く,総数の六四・二%を占め,そのほか,詐欺の七・一%,その他の風俗犯の一・九%,危険傷害・重傷害の一・六%,横領の一・五%となっている。ドイツにおいても,窃盗と詐欺を合わせると,総数の七割強となり,わが国と同様,財産犯が刑法犯の大多数を占めている。そのほか,同表には罪名として示されていないけれども,一九六〇年に刑法犯総数の〇・〇四%に過ぎなかった麻薬犯罪が,一九七〇年には,総数の〇・七%と増加していることが,注目される。次に,ドイツにおける一九六三年から一九七〇年までの刑法犯(重罪および軽罪)検挙者の年齢層別人員指数の推移をみたのが,I-5図である。ドイツでは,成人は二一歳以上の者であり,青年は一八歳以上二一歳未満,少年は一四歳以上一八歳未満の者となっている。児童は,一四歳未満であり,刑事上の責任を問われないが,この図の検挙者の中には含まれている。同図により,一九六三年の各年齢層別検挙者数を一〇〇とする指数で示すと,最も増加率の高いのは,少年層で,一九七〇年の指数は,一九一となっており,次に,児童層の一七七,青年層の一五二,成人層の一〇五となっている。また,刑法犯(重罪および軽罪)の検挙者総数における二一歳未満の者の占める割合は,一九六三年には二三%であったが,一九七〇年には約三三%に増加している。

I-5図 刑法犯(重罪・軽罪)検挙者の年齢層別人員指数(ドイツ)(1963〜1970年)

 そのほか,一九六三年に,麻薬犯罪の検挙者のうちで二一歳未満の者の占める割合が,二・六%に過ぎなかったのに,一九七〇年には,六七・三%に激増しており,青少年による麻薬犯罪の増加も注目される(連邦刑事局警察犯罪統計)。
 いうまでもなく,厳密な比較は困難であるが,アメリカ,イギリスおよび後に述べるフランスでは,青年層による犯罪が最も増加しているのに,ドイツでは,少年や児童による犯罪の増加が目だっているといえよう。これに対し,わが国では,少年の主要刑法犯検挙人員は減少している。その年齢層別の傾向については,第三編第一章の少年犯罪で述べているとおりである。