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 昭和45年版 犯罪白書 第三編/第二章/二/3 

3 被疑者の罪名,前歴等

 III-119表は,この種事件により起訴されたおもな事件について,その罪名をみたものである。同表は,数個の罪名により起訴された場合には,そのすべての罪名と,これに応ずる人員を重複して掲げ,延べ人員の合計も計上してあるが,実人員は,昭和四三年については七五二人,同四四年については,三,二二九人となっている。これによると,兇器準備集合・同結集と公務執行妨害を適用されたものが最も多く,ことに,昭和四四年には,その過半数が,この二つの罪名のいずれか,あるいは,その双方によって起訴されている。また,同年には,前年にみられなかった,殺人未遂・同予備,強盗などによって起訴される者が現われ,放火・同未遂・同予備や,爆発物取締罰則違反の適用をみた者も,昭和四三年から四四年にかけて飛躍的に増加していることは,さきに述べた,凶悪化,過激化の途をたどる,この種事犯の最近の傾向を反映するものであろう。

III-119表 主要集団事件罪名別起訴人員(昭和43,44年)

 ところで,この種事件を犯して検挙された者のうち,同種事件の前歴を有する者の割合については,昭和四四年一一月一六,一七日発生の首相訪米阻止事件と,同年一二月一四日に発生した日比谷公園事件により,被疑者として送致された者についてみると,二,一二七人のうちの二三〇人に前歴がみられ,一〇・八%にあたっている。そのうち,前歴一回にとどまる者が一五五人(前歴のある者の六七・四%,以下同じ。),前歴二回が三九人(一七・〇%),三回以上の者が三六人(一五・七%)となっていた。
 この前歴のある者二三〇人について,さらに年齢層,犯行時の役割,家庭環境の別に,人員を示すとともに,二回以上の同種前歴を重ねた者の占める割合を対比したのが,III-120表[1]ないし[3]である。まず,同表[1]によると,年齢の高くなるに従って,前歴の二回以上の者の割合が増加し,二四歳以上の年齢層にあっては,その半数近くの約四五%がこれによって占められている。次の,同表[2]によると,前歴二回以上の者の割合は,犯行時に演じた役割が積極的,指導的になるに従って高くなる傾向が顕著にみられる。また,同表[3]により家庭環境をみると,親と同居している場合より,これと別居しているか,両親を欠く場合の方が,また,生活費や経費を,全面的に保護者に依存している者よりも,その一部または全部を,自ら得ている者の方が,それぞれ,高率を示していることがわかる。

III-120表 前歴のある者のうち,前歴2回以上の比率

 次に,この二三〇人について,最新前歴と今回検挙された事件との期間を調査した結果によれば,六か月以内に再犯に至った者は一二六人で,その五四・八%にあたり,さらに,一年以内でみると一六八人で,七三・〇%にも及んでいることは注目しなければならない。