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 昭和45年版 犯罪白書 第二編/第一章/二/4 

4 公判の審理期間

 憲法第三七条は,被告人に対し,迅速な裁判を受ける権利を保障し,刑事訴訟法第一条は,これを受けて,適正迅速な裁判の実現を,刑事手続の理念の一つとして掲げている。
 そこで,公判手続による裁判の審理期間がどうなっているかをみることとしたい。
 昭和三九年から四三年までの五年間について,起訴から通常第一審の終局までの期間を,年次ごとに百分率にして,地方裁判所と簡易裁判所とに分けてみると,II-29表[1][2]のとおりである。これによると,昭和四三年における地方裁判所の通常第一審事件の終局総人員のうち,六か月以内に終局したものは,総数の七九・五%で,この比率は,例年ほとんど大差がない。しかし,三か月以内に終局したものは,昭和四三年には五一・六%と,最近五年間では,最も低い数字を示している。また,一年をこえたものが,総数の七・八%である。簡易裁判所では,昭和四三年の終局総人員のうち,六か月以内に終局したものは,八五・一%となっている。また,一年をこえたものは,総数の六・八%であり,地方裁判所に比べ,審理期間がやや短くなっているといえる。

II-29表 通常第一審事件(既済)の審理期間(昭和39〜43年)

 次に,昭和四二年,四三年の平均審理期間および平均開廷回数を,主要罪名別にみると,II-30表のとおりである。これによると,贈収賄事件と公職選挙法違反事件が,他の事件に比べて平均開廷回数が多く,平均審理期間も長くなっていることが目につく。

II-30表 通常第一審における主要罪名別平均審理期間および平均開廷回数(昭和42,43年)

 次に,最近五年間について,起訴から控訴審,上告審の終局までの審理期間を,年次ごとに百分率にし,控訴審についてみたのが,II-31表,上告審についてみたのが,II-32表である。まず,控訴審についてみると,昭和四三年の控訴審の終局総人員のうち,総数の一八・五%が六月以内に,四三・六%が六月をこえ一年以内に,二八・九%が一年をこえ三年以内に終局しているが,三年をこえるものが,九・〇%となっている。次に,上告審についてみると,昭和四三年の上告審の終局総人員のうち,総数の一七・四%が一年以内に,五四・七%が一年をこえ二年以内に,一一・一%が二年をこえ三年以内に終局しているが,三年をこえるものが,一六・八%となっている。二年以内に終局したものは,七二・一%で,これまでの最高の数字であるが,総数の一割近くが,終局までに五年をこえる審理期間を要している。

II-31表 控訴事件(既済)の起訴から控訴審終局までの審理期間(昭和39〜43年)

II-32表 上告事件(既済)の起訴から上告審終局までの審理期間(昭和39〜43年)