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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第二章/五/3 

3 一般恩赦

 最近一〇年間に行なわれた一般恩赦の内容の概略は,つぎのとおりである。

(一) 講和恩赦

 平和条約が効力を発生し,わが国が独立を回復したことを記念して行なわれ,最近におけるもっとも大規模な恩赦で,これについて,同条約が効力を発生した昭和二七年四月二八日に,つぎの三つの政令が公布施行された。
(1) 大赦令(同年政令一一七号)撤廃された経済統制法令を中心として公職選挙法や占領中の特殊の取締法令など,多くの特別法の違反者について,その罪を赦免した。
(2) 減刑令(同年政令一一八号)特殊の重罪を除いて,禁鋼以上の刑の言渡をうけてその執行をおわっていない者につき,その刑を一定の基準によって減軽した。
(3) 復権令(同年政令一一九号)刑に処せられた者でその刑の執行をおわりまたは執行の免除を得た日から一定期間な経過したものについて,一般的に資格を回復させた。
 これらの政令の適用人員の合計は百万余におよび,その内訳は,(1)大赦令四四国,二〇八人,(2)減刑令二七七,八一四人(うち在監者が六八,九一三人),(3)復権令二八二,四七〇人であった。

(二) 国連加盟恩赦

 わが国が国際連合に加盟したのを記念して行なわれ,加盟の日である昭和三一年一二月一九日に公布施行された大赦令(同年政令三五五号)による公職選挙法違反者などの赦免と,この日を基準日として行なわれた個別恩赦とに分かれる。大赦令の適用人員の合計は,六九,六二七人で,法令別にみると,公職選挙法が六九,五二五人,政治資金規正法が八人,地方自治法七四条の四(署名運動関係)が九二人などで,いずれも政治活動に関係のある法令の違反者である。

(三) 皇太子御結婚恩赦

 この恩赦は,皇太子明仁親王の結婚の儀にあたり,慶祝の意を表するために行なわれ,挙式の当日である昭和三四年四月一〇日復権令(同年政令一一三号)の公布施行によ・った。この復権令は,公職選挙法や食糧管理法など,政治活動や経済統制に関する法令に違反して一つの罰金に処せられ,その前日までにその執行をおわった者の資格を回復したのであったが,さらに,従来の復権とちがって,基準Hの前日までに一つの罰金に処せられその執行をおわっていない者で,基準日から起算して二カ月以内にその執行をおわったものなどの資格をも回復することとして,適用範囲をひろげた。適用をうけた人貧の合計は四五,七九七人で,その大部分は食糧管理法違反者(三三,〇八三人)と公職選挙法違反者(一二,二三三人)とであった。