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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第二章/五/1 

五 恩赦

1 現行の恩赦について

 恩赦は,有罪判決の効果を失わせたり,変更したりする行政権の作用で,その効力の内容により,大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除,復権の五種類にわかれる。大赦は,有罪の言渡をうけた者については,その言渡の効力を失わせ,また有罪の言渡をうけない者については,公訴権を失わせる。したがって,ある罪が大赦になると,服役中の者が即時釈放されるばかりでなく,警察や検察庁で現に捜査中の者までが,その捜査をうち切られるので,大赦は,恩赦のうちもっともつよい効果をもつ。特赦は,有罪の言渡をうけた特定の個人に,その言渡の効力を失わせる。減刑は,刑の言渡の効力を変更し(たとえば,懲役八年を懲役六年に減軽するなど)または,その執行の態様をかるくしたり,執行期間を短縮する。刑の執行の免除は,言渡刑を変更しないで刑の執行を免除するもので,復権は,有罪の言渡があったため法律上停止または喪失した資格を回復させる。
 恩赦は,二つの形式で行なわれる。政令で罪または刑の種類を定めて一律に行なわれる場合(一般恩赦または政令恩赦ともいわれる)と,個人個人につき,その犯情,行状,犯罪後の状況などを調査し,とくに恩赦を行なうのが相当かどうかを審査して行なわれる場合(個別恩赦といわれる)とである。大赦は,政令恩赦の形式で,また,特赦と刑の執行の免除とはもっぱら個別恩赦の形式でされ,減刑および復権は,双方の形式で行なわれる。
 恩赦を決定するのは内閣である。内閣が個別恩赦の決定をするのは,本人からの出願にもとづきまたは職権により,中央更生保護審査会に上申されたもののうち,同審査会が恩赦の理由があると認めて法務大臣に恩赦の申出をした者にかぎられ,この申出がないと,個別恩赦は行なわれない。