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 昭和35年版 犯罪白書 第二編/第一章/四 

四 公判審理

 現行刑事訴訟法は,公判主義,弁論主義をつよくうちだすとともに,書面の証拠能力を原則として否定し,直接に証人の証言を聞いて有罪無罪の資料とするというたてまえをとったため,公判審理は,旧刑事訴訟法の当時にくらべて,丁重をきわめることとなった。このため,公判廷に喚問される証人の数が,旧法の当時にくらべて増加するにいたったのは,当然である。
 II-12表は,昭和二八年から昭和三三年までの六年の合計につき,第一審の終局判決のあった被告人数,証人のついた被告人数,および,その証人の人数を示したものである。これによると,第一審で終局判決のあった被告人(七二〇,〇〇一人)のうち,三〇六,七二四人すなわち四二・五パーセントにあたるものについて,証人尋問が行なわれたことになる。そして,取り調べた証人の数は,証人一人というのが,証人のついた被告人数の四五・八パーセントで,もっとも多く,ほぼ半数である。なお,証人五人以内のものを合算すると,その八二・四パーセントをしめることになる。

II-12表 証人のついた第一審終局被告人数と証人数別百分率等

 かように,証人の取調を必要とする場合が多くなったから,いきおい公判審理期間が長びき,いわゆる「裁判の遅延」の一因ともなっている。その対策の一つとして,裁判官,検察官,弁護士の三者からなる第一審強化対策協議会が各地方裁判所ごとに組織され,主として公判審理の充実と訴訟の迅速をはかるための諸方策を研究し,逐次これを実行にうつしている実情にある。